a を正の整数とし,b を整数とする。x についての方程式
a2x3+abx2−b2x−5=0
はことなる 3 つの実数解をもち,1 つの解が整数で,残り 2 つの解の積が整数である。a,b の組をすべて求めよ。
3 次方程式の解と係数の関係
この問題は 3 次方程式の解と係数の関係を利用します。
2 次方程式は覚えているけど,3 次方程式忘れた。
暗記してもいいし自分で作っても良い。めったに使うものではないし,公式のもとになる式自体が大事だったりするから,できれば自分で作れたほうがいいね。
ある 3 次方程式の解を α,β,γ とすると
a(x−α)(x−β)(x−γ)=0
と表すことができます(これ重要)。展開すると
a{x2−(α+β)x+αβ}(x−γ)=0
a{x3−γ x2−(α+β)x2+(α+β)γ x+αβ x−αβγ}=0
a{x3−(α+β+γ)x2+(αβ+βγ+γα)x−αβγ}=0 ・・・①
また,ax3+bx2+cx+d=0 ・・・② として,①と②の係数を比べると
α+β+γ=−ab
αβ+βγ+γα=ac
αβγ=−ad
これで,解と係数の関係ができあがりです。
整数の組み合わせをみつける
これを a2x3+abx2−b2x−5=0 に当てはめていきましょう。
α+β+γ=−ab
αβ+βγ+γα=a2b2
αβγ=a25
ここで,整数の解を α,残り 2 つの解を β,γ とすると,βγ は整数ということになります。
よって,αβγ=a25 から,左辺は整数×整数なので,右辺も整数であると言えます。
a は正の整数だから,a25 が整数となるのは a=1 のときだけです。よって,解と係数の関係は
α+β+γ=−b
αβ+βγ+γα=−b2
αβγ=5
と書き換えられます。そして
αβγ=5
という式に注目しましょう。α は整数,βγ は整数だから,これは 整数×整数=5 ということです。このようになる組み合わせは
(α,βγ)=(1,5),(−1,−5),(5,1),(−5,−1)
の 4 通りです。
条件に当てはまるかどうかを確認する
あとは,それぞれの場合について,ことなる 3 つの実数解をもつ,という条件に当てはまるかどうかを考えてみましょう。
(i) (α,βγ)=(1,5) のとき
解と係数の関係に当てはめると
1+β+γ=−b
β+γ=−b−1
また
β+5+γ=−b2
β+γ=−b2−5
よって
−b−1=−b2−5
b2−b+4=0
これは 2 次方程式なので,解を求めてみると整数にならないことが確認できると思います。よって,不適。
(ii) (α,βγ)=(−1,−5) のとき
同様に,解と係数の関係に当てはめていきます。
−1+β+γ=−b
β+γ=−b+1
また
−β−5−γ=−b2
β+γ=b2−5
よって
−b+1=b2−5
b2+b−6=0
(b+3)(b−2)=0
b=2,−3
b=2 のとき
a2x3+abx2−b2x−5=0 は
x3+2x2−4x−5=0
α=−1 より,解の一つは −1 です。組立除法を用いて,式を因数分解してみましょう。
112−1−4−4−1−5−550∣−1
よって
(x+1)(x2+x−5)=0
ここで,x2+x−5 がことなる 2 つの実数解をもつならば,問題文の条件である,全体としてことなる 3 つの実数解をもつ,に当てはまります。
x2+x−5=0 とすると,判別式は
D=1+4⋅5=21>0
よって,式はことなる 3 つの実数解を持ちます。これで,(α,βγ)=(−1,−5) はオッケーです。
次に,b=−3 のとき
x3−3x2−9x−5=0
11−3−1−4−94−5−550∣−1
(x+1)(x2−4x−5)=0
(x+1)(x−5)(x+1)=0
因数分解してみると,この式は解が 2 つしかありません。よって,不適。
(iii) (α,βγ)=(5,1) のとき
5+β+γ=−b
β+γ=−b−5
また
5β+1+5γ=−b2
5β+5γ=−b2−1
β+γ=−5b2−51
よって
−b−5=−5b2−51
−5b−25=−b2−1
b2−5b−24=0
(b−8)(b+3)=0
b=−3,8
b=−3 のとき
x3−3x2−9x−5=0
11352−9101−550∣5
(x−5)(x2+2x+1)=0
(x−5)(x+1)2=0
解が 2 個だから,不適。
b=8 のとき
x3+8x2−64x−5=0
118513−64651−560∣5
(x−5)(x2+13x+1)=0
x2+13x+1=0 とすると,判別式は
D=132−4>0
よって,式はことなる 3 つの実数解をもつ。
(iv) (α,βγ)=(−5,−1) のとき
−5+β+γ=−b
β+γ=−b+5
−5β−1−5γ=−b2
−5(β+γ)=−b2+1
β+γ=5b2−51
よって
−b+5=5b2−51
−5b+25=b2−1
b2+5b−26=0
式を満たす整数 b は存在しない。
したがって
(a,b)=(1,2),(1,8) (答え)
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