3次方程式の解と係数の関係を利用して整数の組み合わせを考える(横浜国立大2017文系第2問)
$a$ を正の整数とし,$b$ を整数とする。$x$ についての方程式
$a^2x^3+abx^2-b^2x-5=0$
はことなる 3 つの実数解をもち,1 つの解が整数で,残り 2 つの解の積が整数である。$a$,$b$ の組をすべて求めよ。
3 次方程式の解と係数の関係
この問題は 3 次方程式の解と係数の関係を利用します。
ある 3 次方程式の解を $\alpha,\beta,\gamma$ とすると
$a(x-\alpha)(x-\beta)(x-\gamma)=0$
と表すことができます(これ重要)。展開すると
$a\{x^2-(\alpha+\beta)x+\alpha\beta\}(x-\gamma)=0$
$a\{x^3-\gamma x^2-(\alpha+\beta)x^2+(\alpha+\beta)\gamma x+\alpha\beta x-\alpha\beta\gamma\}=0$
$a\{x^3-(\alpha+\beta+\gamma)x^2+(\alpha\beta+\beta\gamma+\gamma\alpha)x-\alpha\beta\gamma\}=0$ ・・・①
また,$ax^3+bx^2+cx+d=0$ ・・・② として,①と②の係数を比べると
$\alpha+\beta+\gamma=-\cfrac{b}{a}$
$\alpha\beta+\beta\gamma+\gamma\alpha=\cfrac{c}{a}$
$\alpha\beta\gamma=-\cfrac{d}{a}$
これで,解と係数の関係ができあがりです。
整数の組み合わせをみつける
これを $a^2x^3+abx^2-b^2x-5=0$ に当てはめていきましょう。
$\alpha+\beta+\gamma=-\cfrac{b}{a}$
$\alpha\beta+\beta\gamma+\gamma\alpha=\cfrac{b^2}{a^2}$
$\alpha\beta\gamma=\cfrac{5}{a^2}$
ここで,整数の解を $\alpha$,残り 2 つの解を $\beta$,$\gamma$ とすると,$\beta\gamma$ は整数ということになります。
よって,$\alpha\beta\gamma=\cfrac{5}{a^2}$ から,左辺は整数×整数なので,右辺も整数であると言えます。
$a$ は正の整数だから,$\cfrac{5}{a^2}$ が整数となるのは $a=1$ のときだけです。よって,解と係数の関係は
$\alpha+\beta+\gamma=-b$
$\alpha\beta+\beta\gamma+\gamma\alpha=-b^2$
$\alpha\beta\gamma=5$
と書き換えられます。そして
$\alpha\beta\gamma=5$
という式に注目しましょう。$\alpha$ は整数,$\beta\gamma$ は整数だから,これは 整数×整数=5 ということです。このようになる組み合わせは
$(\alpha,\beta\gamma)=(1,5),(-1,-5),(5,1),(-5,-1)$
の 4 通りです。
条件に当てはまるかどうかを確認する
あとは,それぞれの場合について,ことなる 3 つの実数解をもつ,という条件に当てはまるかどうかを考えてみましょう。
(i) $(\alpha,\beta\gamma)=(1,5)$ のとき
解と係数の関係に当てはめると
$1+\beta+\gamma=-b$
$\beta+\gamma=-b-1$
また
$\beta+5+\gamma=-b^2$
$\beta+\gamma=-b^2-5$
よって
$-b-1=-b^2-5$
$b^2-b+4=0$
これは 2 次方程式なので,解を求めてみると整数にならないことが確認できると思います。よって,不適。
(ii) $(\alpha,\beta\gamma)=(-1,-5)$ のとき
同様に,解と係数の関係に当てはめていきます。
$-1+\beta+\gamma=-b$
$\beta+\gamma=-b+1$
また
$-\beta-5-\gamma=-b^2$
$\beta+\gamma=b^2-5$
よって
$-b+1=b^2-5$
$b^2+b-6=0$
$(b+3)(b-2)=0$
$b=2,-3$
$b=2$ のとき
$a^2x^3+abx^2-b^2x-5=0$ は
$x^3+2x^2-4x-5=0$
$\alpha=-1$ より,解の一つは $-1$ です。組立除法を用いて,式を因数分解してみましょう。
$\begin{matrix}1&2&-4&-5&|\underline{-1}\\&-1&-1&5\\\hline1&-4&-5&0\end{matrix}$
よって
$(x+1)(x^2+x-5)=0$
ここで,$x^2+x-5$ がことなる 2 つの実数解をもつならば,問題文の条件である,全体としてことなる 3 つの実数解をもつ,に当てはまります。
$x^2+x-5=0$ とすると,判別式は
$D=1+4\cdot5=21>0$
よって,式はことなる 3 つの実数解を持ちます。これで,$(\alpha,\beta\gamma)=(-1,-5)$ はオッケーです。
次に,$b=-3$ のとき
$x^3-3x^2-9x-5=0$
$\begin{matrix}1&-3&-9&-5&|\underline{-1}\\&-1&4&5\\\hline1&-4&-5&0\end{matrix}$
$(x+1)(x^2-4x-5)=0$
$(x+1)(x-5)(x+1)=0$
因数分解してみると,この式は解が 2 つしかありません。よって,不適。
(iii) $(\alpha,\beta\gamma)=(5,1)$ のとき
$5+\beta+\gamma=-b$
$\beta+\gamma=-b-5$
また
$5\beta+1+5\gamma=-b^2$
$5\beta+5\gamma=-b^2-1$
$\beta+\gamma=-\cfrac{b^2}{5}-\cfrac{1}{5}$
よって
$-b-5=-\cfrac{b^2}{5}-\cfrac{1}{5}$
$-5b-25=-b^2-1$
$b^2-5b-24=0$
$(b-8)(b+3)=0$
$b=-3,8$
$b=-3$ のとき
$x^3-3x^2-9x-5=0$
$\begin{matrix}1&^3&-9&-5&|\underline{5}\\&5&10&5\\\hline1&2&1&0\end{matrix}$
$(x-5)(x^2+2x+1)=0$
$(x-5)(x+1)^2=0$
解が 2 個だから,不適。
$b=8$ のとき
$x^3+8x^2-64x-5=0$
$\begin{matrix}1&8&-64&-5&|\underline{5}\\&5&65&6\\\hline1&13&1&0\end{matrix}$
$(x-5)(x^2+13x+1)=0$
$x^2+13x+1=0$ とすると,判別式は
$D=13^2-4>0$
よって,式はことなる 3 つの実数解をもつ。
(iv) $(\alpha,\beta\gamma)=(-5,-1)$ のとき
$-5+\beta+\gamma=-b$
$\beta+\gamma=-b+5$
$-5\beta-1-5\gamma=-b^2$
$-5(\beta+\gamma)=-b^2+1$
$\beta+\gamma=\cfrac{b^2}{5}-\cfrac{1}{5}$
よって
$-b+5=\cfrac{b^2}{5}-\cfrac{1}{5}$
$-5b+25=b^2-1$
$b^2+5b-26=0$
式を満たす整数 $b$ は存在しない。
したがって
$(a,b)=(1,2),(1,8)$ (答え)
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