複素数を極形式にして三角関数の最大・最小を求める(東京都立大2020理学部第3問)

α=1+i2\alpha=\cfrac{1+i}{2} とする。ただし,ii は虚数単位を表し,複素数 zz と共役な複素数を zˉ\bar{z} で表す。以下の問いに答えなさい。(東京都立大2020)

(1) 複素数 zz に対し,αˉz+αzˉ\bar{\alpha}z+\alpha\bar{z} は実数になることを示しなさい。

(2) 複素数平面上で点 ww が円 w=1|w|=1 上を動くとき,点 z=4w+3wz=4w+\cfrac{3}{w} の描く図形を求めなさい。

(3) 点 zz が(2)で求めた図形の上を動くとき,αˉz+αzˉ\bar{\alpha}z+\alpha\bar{z} の最大値と最小値を求めなさい。また,そのときの zz の値を求めなさい。

複素数を x+yi で表す

(1)から始めます。

ここは複素数を x+yix+yi と表してみましょう。

α=12(1+i)\alpha=\cfrac{1}{2}(1+i) のとき,その共役な複素数は

αˉ=12(1i)\bar{\alpha}=\cfrac{1}{2}(1-i) となるので

αˉz+αzˉ\bar{\alpha}z+\alpha\bar{z}
=12(1i)(x+yi)+12(1+i)(xyi)=\cfrac{1}{2}(1-i)(x+yi)+\cfrac{1}{2}(1+i)(x-yi)
=12(x+yixi+y+xyi+xi+y)=\cfrac{1}{2}(x+yi-xi+y+x-yi+xi+y)
=12(2x+2y)=\cfrac{1}{2}(2x+2y)
=x+y=x+y ・・・①

(証明終わり)

式から虚数の ii が消えたということは,この式は実数であるということです。

極形式になおす

(2)に進みます。

この問題は,実はこの辺りから複素数平面というより,媒介変数表示の設問に変わってしまいます。

w=1|w|=1 より,両辺を 2 乗して

w2=1|w|^2=1
wwˉ=1w\bar{w}=1
wˉ=1w\bar{w}=\cfrac{1}{w}

よって

z=4w+3wz=4w+\cfrac{3}{w}
=4w+3wˉ=4w+3\bar{w} ・・・②

ww を極形式で表すと

w=cosθ+isinθw=\cos\theta+i\sin\theta

また

wˉ=cosθisinθ\bar{w}=\cos\theta-i\sin\theta

となるので,これらを②に代入すると

z=4(cosθ+isinθ)+3(cosθisinθ)z=4(\cos\theta+i\sin\theta)+3(\cos\theta-i\sin\theta)
=7cosθ+isinθ=7\cos\theta+i\sin\theta

これ,どうなるの?
θ\theta にいろいろな値を当てはめて考えてみるといいよ。

たとえば,θ=0\theta=0 のとき,z=7z=7 となるので,平面座標では (7,0) です。θ=π2\theta=\cfrac{\pi}{2} なら,z=iz=i だから,(0,1)。θ=π\theta=\pi なら,z=7z=-7 だから, (7,0)(-7,0)

こうして考えていくと,楕円ができあがります。

したがって,楕円の式は

x272+y2=1\cfrac{x^2}{7^2}+y^2=1 (答え)

三角関数の合成

(3)に進みます。

(1)を振り返ると,αˉz+αzˉ\bar{\alpha}z+\alpha\bar{z} は実数で =x+y=x+y でした。これはもともと z=x+yiz=x+yi としていたことを思い出しましょう。

また,(2)で z=7cosθ+isinθz=7\cos\theta+i\sin\theta となったので

x=7cosθx=7\cos\thetay=sinθy=\sin\theta

となります。

話をまとめると

αˉz+αzˉ=7cosθ+sinθ\bar{\alpha}z+\alpha\bar{z}=7\cos\theta+\sin\theta

ということになります。

ここから,三角関数の合成を行います。

=52sin(θ+t)=5\sqrt{2}\sin(\theta+t)

最大となるのは sin(θ+t)=1\sin(\theta+t)=1 のとき,525\sqrt{2}

θ+t=π2\theta+t=\cfrac{\pi}{2}
θ=π2t\theta=\cfrac{\pi}{2}-t

三角関数の合成で作った tt の値の範囲は 0<t<π20<t<\cfrac{\pi}{2} です。

単位円を描いてみると,三角比の相互の関係がつかめるでしょう。

sin(π2t)=cos t\sin\Big(\cfrac{\pi}{2}-t\Big)=\cos t
cos(π2t)=sin t\cos\Big(\cfrac{\pi}{2}-t\Big)=\sin t

となるので

z=7sin t+icos t=7752+i52z=7\sin t+i\cos t=\cfrac{7\cdot7}{5\sqrt{2}}+\cfrac{i}{5\sqrt{2}}
=2(49+i)10=\cfrac{\sqrt{2}(49+i)}{10}

次に最小値を求めると

最小となるのは sin(θ+t)=1\sin(\theta+t)=-1 のとき 52-5\sqrt{2}

θ+t=3π2\theta+t=\cfrac{3\pi}{2}
θ=3π2t\theta=\cfrac{3\pi}{2}-t

sin(3π2t)=cos t\sin\Big(\cfrac{3\pi}{2}-t\Big)=-\cos t
cos(3π2t)=sin t\cos\Big(\cfrac{3\pi}{2}-t\Big)=-\sin t
z=7sin t+cos tz=7\sin t+\cos t
=7752i52=-\cfrac{7\cdot7}{5\sqrt{2}}-\cfrac{i}{5\sqrt{2}}
=2(49+i)10=-\cfrac{\sqrt{2}(49+i)}{10}

したがって

z=2(49+i)10z=\cfrac{\sqrt{2}(49+i)}{10} のとき,最大値 525\sqrt{2}

z=2(49+i)10z=-\cfrac{\sqrt{2}(49+i)}{10} のとき,最小値 52-5\sqrt{2} (答え)