ICT教育が生む格差 アメリカ農村部におけるインターネット接続の問題

アメリカには多くの先進的なIT企業がありインターネットで世界をけん引する役目を担っていますが、国土が広大であるため地方でのインターネット接続環境には大きな問題を抱えているようです。

”リーガンは自分たちの勉強についていくのに苦労している全国のおよそ300万人の学生の一人である。なぜなら、彼らは家庭のインターネットなしですまさなければならないからだ。教室では、ノートパソコンとインターネットへのアクセスはほぼ普遍的である。しかし自宅では、インターネットサービスの費用とインターネット利用の格差により、都市部と地方の両方で障害が発生している。宿題の格差として知られるようになったこの問題において、AP通信の調査によると、アメリカの学生のおよそ17パーセントが自宅でコンピュータを利用できず、また18パーセントがブロードバンドインターネットを利用できない。”

ICT教育の普及とそれに取り残される田舎の子どもたち

アメリカでは家庭学習でコンピューターを使う機会が増えているが、農村部ではインターネットへのアクセスが課題。

アメリカの学校現場ではICTの利用が進みつつあります。生徒たちはブラウザやアプリを通じて宿題を提出し、カレンダーアプリを使ってスケジュールを管理し、コンピューターで作成したプレゼンテーションを教室のプロジェクターに映しだして発表するなど、様々な方法でコンピューターを活用しています。

こうした使い方を想像すれば、自宅でインターネットに接続できることが非常に重要であることが分かります。アメリカでは自宅でインターネットに接続できない子供の数は減少しつつありますが、それでもおよそ5人に1人は自宅にネット環境がありません。そこには経済的格差や都市と地方の地域格差の問題が横たわっています。ここで取り上げたリーガンのように、助成金によって生徒たちにノートパソコンが配られ、設置されたアクセスポイントからインターネットにアクセスする場合もあります。しかしその助成金プログラムが終了すると、リーガンたちはインターネットに接続できなくなってしまいました。

国土の狭い日本では、田舎でもインターネットに接続できないケースは稀ですが(それでも数十万世帯はブロードバンドにアクセスできないと見られている)、国土面積が広く住宅が点在するアメリカの農村部では、家一軒にブロードバンド回線を敷設するための費用が日本とはまったく異なります。アメリカ政府はインターネット接続を電気や上下水道と同じ必須のインフラと考え、農村部におけるブロードバンドの普及に予算を費やしていますが、それでも頻繁に通信がとぎれる低速のネット回線しか利用できない人々が大勢いるのが現状です。

こうした国土の事情の違いが、アメリカにおける教育格差にもつながっているのです。