以下の問いに答えよ。(九州大2016)
(1) θ を 0≦θ<2π を満たす実数、i を虚数単位とし、z をz=cosθ+isinθ で表される複素数とする。このとき、整数 n に対して次の式を証明せよ。
cosnθ=21(zn+zn1),sinnθ=−2i(zn−zn1)
(2) 次の方程式を満たす実数 x(0≦x<2π) を求めよ。
cosx+cos2x−cos3x=1
(3) 次の式を証明せよ。
sin220°+sin240°+sin260°+sin280°=49
今回色々やることあるけど、
z+z2+z3+⋯ の和を求める方法をマスターするのが目標。
そうそう、教科書ではやらないと思う。でも私立大学を中心に出題されること結構ある。問題集には載ってる問題だから典型として知っといた方がいいね。
ド・モアブルの定理
今回はド・モアブルの定理を使っていきます。
ド・モアブルの定理
n が整数のとき
(cosθ+isinθ)n=cosnθ+isinnθ
cosθ+isinθ は複素数の極形式の表し方でした。ド・モアブルの定理でおさえておくべきポイントは、たとえば z の偏角が 30° とすると、 z2 の偏角は 60°、z3 の偏角は 90° になるということです。
では、(1) の式を示していきましょう。
z=cosθ+isinθ
もともと極形式は
z=r(cosθ+isinθ) (
r は原点からの距離)だから、上の式は
r=1、つまり原点からの距離が
1 ということ。
θ の値によって偏角が変化して、
z は半径
1 の円周上のどこかの点になる。
まず、コサインの方の式から。
ド・モアブルの定理より
zn=(cosθ+isinθ)n
zn=cosnθ+isinnθ
zn1=cosnθ+isinnθ1
となるので
zn+zn1=cosnθ+isinnθ+cosnθ+isinnθ1
分母の
i は早めに有理化します。
zn+zn1=cosnθ+isinnθ+(cosnθ+isinnθ)(cosnθ−isinn)cosnθ−isinn
=cosnθ+isinnθ+cos2nθ+sin2nθcosnθ−isinnθ
ここで、三角関数の公式
sin2x+cos2x=1 より分母が
1 となって
=cosnθ+isinnθ+cosnθ−isinnθ
=2cosnθ
よって
cosnθ=21(zn+zn1)
また
zn−zn1=2isinnθ
isinnθ=21(zn−z21)
sinnθ=2i1(zn−z21)
sinnθ=−2i(zn−z21)(証明終わり)
ド・モアブルの定理から2倍角、3倍角を考える
(2) に進みます。
cosx+cos2x−cos3x=1
上で説明した通り、ド・モアブルの定理から z2 は偏角 2 倍、z3 は偏角 3 倍ということでした。そこから (1) で証明した式を使いましょう。
θ=x として
n=1 のとき、cosx=21(z+z1)
n=2 のとき、cos2x=21(z2+z21)
n=3 のとき、cos3x=21(z3+z31)
よって与式は
21(z+z1+z2+z21+z3+z31)=1
z+z1+z2+z21+z3+z31=2⋯①
ここで展開の公式 (a+b)2=a2+2ab+b2 を利用します。
(z+z1)2=z2+2z⋅z1+z21=z2+z21+2 を変形して
z2+z21=(z+z1)2−2
次も同様に、
(a+b)3=a3+3a2b+3ab2+b3 の関係から考えるよ。
z3+z31=(z+z1)3−3z−3z1
z3+z31=(z+z1)3−3(z+z1)
①に代入すると
z+z1+(z+z1)2−2+(z+z1)3−3(z+z1)=2
ここで、z+z1=k とすると
k+k2−2−k3+3k=2
−k3+k2+4k−4=0
k3−k2−4k+4=0
まず、式が
0 になる
k の値を考えるんだったでしょ?今回は
k=1 で左辺が
0 になるよね。
k=1 で式が
0 になるとき、式は
k−1 で割り切れます。この辺りがピンとこないときは数Ⅱの剰余の定理を復習しましょう。
そして組み立て除法を用いたほうが早く計算できます。
11−110−40−44−40∣4
よって
(k−1)(k2−4)=0
(k−1)(k+2)(k−2)=0
k=1,−2,2
これを最初に求めた cosx=21(z+z1) に当てはめます。
k=1 のとき cosx=21
x=3π,35π
k=−2 のとき cosx=−1
x=π
k=2 のとき cosx=1
x=0
したがって
x=0,3π,π,35π(答え)
ド・モアブルと剰余の定理を用いて z+z2+z3⋯ を求める
(3) に進みます。
sin220°+sin240°+sin260°+sin280°=49
ようやく今回のポイントに入る。ここまで問題解いてきたらド・モアブルの感覚取り戻せたと思う。この式もド・モアブル使って表現すればいけそうだよね。
まず (1) で求めた式を使って
sin2nθ=−41(zn−zn1)2
sin2nθ=−41(z2n−z2n1−2)
ここで
θ=20° とすると、
40° は
n=2、
60° は
n=3 という具合に考えることができそうです。
よって与式は
−41(z2+z21+z4+z41+z6+z61+z8+z81−8)⋯①
ここからは完全に解法として覚えておくしかない部分。知ってれば解けるからやり方暗記してね。
ここで問題となるのは、
z の値が分からないことです。しかし、
z2,z4,⋯ とすると偏角が増えていくわけですから、考えてみると
z9 のときに偏角が
180° となることが分かります。つまり
n=9 のとき
nθ=180° です。
z9=cos180°+isin180°=−1
移項して
z9+1=0⋯②
この式は
z=−1 のとき左辺が
0 になります。つまり式は
z+1 で割り切れるということです。
(2) でやった剰余の定理使った方程式の解き方と同じ考え。
ここも組み立て除法を使います。
110−1−10110−1−10110−1−10110−1−10111−10∣−1
要するに
z8 から
z の項まで全部係数
0 ってことだからこうなるよね。
よって②は
(z+1)(z8−z7+z6−z5+z4−z3+z2−z+1)=0
並べかえて
(z+1)(z2+z4+z6+z8−z−z3−z5−z7+1)=0
ここで z は偏角が 20° だったので、z=−1 と言えます。つまり (z+1) の部分が 0 になることはないので、(z2+z4+z6+z8−z−z3−z5−z7+1) の方が 0 になります。
z=−1 だから
z2+z4+z6+z8−z−z3−z5−z7+1=0
z2+z4+z6+z8−z−z3−z5−z7=−1
考え方としては、
z2+z4+z6+z8 の部分はもとの式にあるので良いとして、
−z−z3−z5−z7 の部分がもとの式に無いので変形して作っていきます。
要するに作らないといけない部分って
z21 とかの分数の部分でしょ?
そこで、ムリヤリ分数の形にすることを考えると、
z=z9⋅z81 とすることができます。この考えていくと
z2+z4+z6+z8−z−z3−z5−z7=−1
z2+z4+z6+z8−z9(z81+z61+z41+z21)=−1
ここで
z9=−1 だったので
z2+z21+z4+z41+z6+z61+z8+z81=−1
①に代入すると
−41(−1−8)=49(答え)
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