初めての共通テスト対策、英語・数学で何をすべきか
今年度より,初めての共通テストが実施されます。不安に感じている受験生も多くいるかと思います。実際,受験生は何をすべきなのか,英語・数学についてアドバイスを書き留めておきます。
英語は大きくは変わらないが配点に注意
英語については,従来のセンター試験のための勉強法がそのまま使えます。
ただし,共通テストでは発音・アクセントの対策は必要ありません。また,文法問題を突破するための事細かい知識も必要ありません。
かと言って,従来の分厚い文法問題集を練習する必要がないかと言えば,そうではないと思います。英文法についての正しい知識とイディオムの知識は依然として重要なので,文法問題集に取り組み,重要な文法やイディオムの知識を身につけておくことは,共通テストの英文を正確に理解するために必要なものです。
英文法を正確に理解するというのならば,教科書を読んで暗記すれば済む話であると思う人もいるかもしれません。もちろん,教科書をちゃんと読むことは大切です。しかし,その知識が本当にちゃんと身についているかどうかを確認するためには,文法問題集に取り組む必要があります。問題集に取り組むことで,自分が理解しているつもりの知識が不十分であったことを学ぶことができます。
確かに,問題集の中には重箱の隅をつつき過ぎて,やる価値のないものも無いわけではありませんが,全体としてはやる価値が十分あるものです。分厚い問題集に取り組むのは大変そうに見えるかもしれませんが,逆にコスパに優れた勉強法であることは知っておいてもよいでしょう。
また,センター試験の過去問に取り組むことは依然として重要です。形式は多少異なりますが,実際に大学入試の英文に触れるべきです。普段,単語帳で覚えているつもりの単語の知識も,実際の英文を読んでいる中でその知識をうまく使えず解釈に苦労することはよくあります。単語帳の知識はあくまで断片的なものに過ぎないので,実際の英文に取り組みながら前後の文脈の中で知識をあてはめていく練習が必要です。センター試験過去問の英文がスムーズに読めるようになるまで音読をすると良いでしょう。英語は反射神経が大切なので,ゆっくりとなら読めるというレベルで満足してはいけません。日本語と同じスピードで英語が理解できるというところまで,英文を繰り返し読んで反射神経を鍛えることが大切です。
さらに,自分が志望する大学の筆記とリスニングの配点比率も調べておきましょう。共通テストがセンター試験と大きく異なる点は,筆記とリスニングの配点比率が大学によって大幅に変更されているところです。例えば東京大学は筆記とリスニングの配点比率が7:3ですが,千葉大学は4:1です。一方で北海道大学は1:1となっており,リスニングの比率が大きくなっています。このように,受験する大学によってリスニングをどの程度重視するかの判断が大きく分かれる結果となっているため,大学によってリスニングの練習をしっかりとしておく必要があります。
リスニングについても,センター試験の過去問に取り組んでおくと良いでしょう。形式の違いはともかく,大学入試レベルの音声に慣れておくことが大切です。英文のスピードに耳を慣れさせるだけでなく,スクリプトをしっかりと読んで,会話で用いられる英文の単語の知識や表現の方法を丹念に押さえていくことが大切です。練習をするときには,聞こえてくる音声の上に自分の声を重ねて同時に読み上げていくオーバーラッピングを行うと良いでしょう。ネイティブスピーカーの読み上げ速度に自分の発音がついていけるようになると,英語を聞き取る能力も自然と身についていきます。
リスニングは音声を用いたトレーニングを正しく行えば,筆記よりもむしろ点数を上げやすいと思います。英会話スクールのつもりで,自分で実際に声を出して練習してみましょう。リスニングの配点比率が高い大学は,練習をちゃんと行えば,むしろ今年こそ狙い目であると言えます。
数学は教科書の読み直しを
おそらく,共通テストで最も形式が変わるのが数学です。受験生のみなさんは,模試などを受けながら,今までやったことのない新しい形式に頭を抱えているのではないかと思います。
実際,現在行われている模試や各社が出版している予想問題には難易度の高すぎる問題が含まれており,今年度の実際の試験がそのレベルで出題されるとは思えません。点数が取れなかったとしても気にする必要はありません。
そうは言っても,共通テストに向けて実際何をすべきなのか分からないと思う受験生も多いかと思います。
一般論として,試験形式が変更された場合,初年度の問題は難易度は低く設定される傾向があります。現行のセンター試験は何十年も実施されているがゆえに,その対策法も徹底的に追及されていて,過去問をしっかり解いた学生が高得点をとるという明らかな傾向があります。そのため,出題者の側も難易度を上げざるを得ないといういたちごっこのような状況が続いてきました。
共通テストにおいては,今まで蓄積されてきたいわゆる受験テクニックは通用しません。予備校が教える計算を効率よく行うスゴ技のようなものはほとんど意味がなくなります。いわゆる計算テクは排除され,計算作業そのものはシンプルになるでしょう。
実際の問題がどうなるかの予測が最も難しいのが数学です。しかし,これまで実施された施行問題から分かることは,与えられた条件から仮説を立て立式を行うというプロセスの重要性です。実は,これは従来行われてきた各大学の二次試験では普通に行われてきたことで,ことさら新しいことでもありません。
中堅私立大レベルの問題では仮説と検証のプロセスを問わないような問題も多くあるので,これから数学に取り組むなら国公立の二次試験に取り組むと良いでしょう。
とは言え,国公立二次試験は難しすぎて,全く歯が立たないという受験生も多いかもしれません。そのような人にアドバイスをするとすれば,教科書をしっかり読み直すことです。
実はセンター試験も共通テストに向けて,近年,問題の傾向に少し変化が見られています。例えば 2018 年度本試の数IIBではラジアンの定義について問われました。1 ラジアンとは何か?と問われて,すぐに答えることができるでしょうか。
おそらく,180度が π ラジアンであることはすぐに思いつくでしょうが,1 ラジアンが何を表すかと問われたら答えに窮するかもしれません。答えは,半径が 1 の円における,弧の長さが 1 の扇形の中心角の大きさです。弧の長さが 1 なら 1 ラジアン,弧の長さが π なら π ラジアンです。計算テクにばかりこだわっていたら,きっと解答できないと思います。
共通テストで問われるのは,教科書で習った内容の基本的定義の部分です。単に計算が合えばよい,ではなく,なぜそれが成り立つのかをしっかり理解しておく必要があります。
今年度の共通テストで何が出題されるかを予測することはとても難しいことですが,教科書をしっかりと読んでいた生徒に受験の女神がほほえむ結果になることは間違いないしょう。
では,数学についてセンター試験の過去問に取り組むことは必要でしょうか。これについては,取り組んでおいた方が良いと考えています。
これまで公表された施行問題から言えば,形式は違ってもセンター試験の過去問で取り上げられた計算式を用いる機会は非常に多いと言えます。共通テストでは仮定から立式を行うことが多いのですが,立式がひらめくがどうかはセンター試験の過去問を解いたかどうかが大きく影響すると思われます。過去問の中に立式のためのヒントが数多く含まれているので,センター試験の過去問を解いておくことは共通テストでも大いに役立つでしょう。
センター試験であろうが共通テストであろうが,それらが教科書の知識がきちんと身についているかどうかを測るための試験であることを忘れてはいけません。普段,演習に取り組んでいるときも,「とにかく解ければいいや」ではなく,「なぜそれが成り立つのか」を考えながら取り組むことが大切です。
受験に裏技はありません。出題者は裏技に頼る愚かな受験生をいかにしてたたき落とすかを入念に検討した上で問題を作っていることを知っておくべきです。教科書をしっかりと読みなおしましょう。
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