【数Ⅲ複素数平面】「反対の反対は正しいのだ」の理屈 背理法を用いて値を定める(九州大)

$a$,$b$ を複素数、$c$ を純虚数でない複素数とし、$i$ を虚数単位とする。複素数平面において、点 $z$ が虚軸全体を動くとき
$$\displaystyle w=\frac{az+b}{cz+1}$$
で定まる点 $w$ の軌跡を $C$ とする。次の 3 条件が満たされているとする。
(ア)$z=i$ のときに $w=i$ となり、$z=-i$ のときに $w=-i$ となる。
(イ)$C$ は単位円の周に含まれる。
(ウ)点 $-1$ は $C$ に属さない。
このとき $a,b,c$ の値を求めよ。さらに $C$ を求め、複素数平面上に図示せよ。(九州大2019)


考え方いろいろあるけど、なるべく分かりやすいルートで解いていくね。

条件から 式を作る

まずは条件(ア)は代入するだけなので簡単に式がつくれます。
条件(ア)より
$\displaystyle i=\frac{ia+b}{ic+1}\cdots\text{①}$
$\displaystyle -i=\frac{-ia+b}{-ic+1}\cdots\text{②}$

また、問題文をよく読んでいくつか前提となる式を作っておきます。

まず、 $c$ が純虚数ではないということは $c+\bar c\not =0$
$z$ が虚軸全体を動くということは $z$ は純虚数であるということ
よって $z+\bar z=0$

(イ)で $C$ が単位円周上を動くということは $|w|=1$

また (ウ)に$-1$ を含まないとあるので $w\not =-1$

この辺は教科書の複素数平面の公式をしっかり覚えてね。さらにこの条件を使って $a,b,c$ を求めていくよ。

①を変形すると
$\displaystyle i=\frac{ia+b}{ic+1}$
$i(ic+1)=ia+b$
$-c+i=ia+b\cdots\text{③}$
②を変形すると
$\displaystyle -i=\frac{-ia+b}{-ic+1}$
$\displaystyle -i(-ic+1)=-ia+b$
$\displaystyle -c-i=-ia+b\cdots\text{④}$
③+④
$-2c=2b$
$b=-c$
③-④
$2i=2ia$
$a=1$
よって与式は
$\displaystyle w=\frac{z-c}{cz+1}\cdots\text{⑤}$

ここで、$z$ は虚軸全体だったから $z=0$ を代入しても式が成り立つよ。

$z=0$ を代入すると
$\displaystyle w=\frac{-c}{1}$
両辺の絶対値をとって
$|w|=|-c|$

絶対値は $|ab|=|a|\times|b|$ みたいに分解できるからね。

$|w|=|-1|\times|c|$
$|w|=1\times|c|$
$|w|=|c|$

ここで条件(イ)より $|w|=1$ だったので
$|c|=1$

これは言いかえると、複素数 $c$ 全体は原点を中心とする半径 $1$ の円であるということです。しかし、これでは$c$ はいろんな値を取りうるので $1$ つに決めることができません。

ここから何していいか全然思いつかないです。

ここからが難しい部分。今まで作った式でできそうなことがないから、条件をもう一度見てそこから式を作っていく。

$c+\bar c\not =0$ で式を作れそうにないので、$w\not =-1$ で考えてみます。
$w\not =-1$ より
$\displaystyle -1\not =\frac{z-c}{cz+1}$
$-cz-1\not =z-c$
$-cz-z\not =-c+1$
$cz+z\not =c-1$
$(c+1)z\not =c-1$
$\displaystyle z\not =\frac{c-1}{c+1}$
謎の式ができた。

確かにそうね。$\not =$ のままだと何も証明できないから、こういうときは背理法を考えてみるとよい。

ここで左辺の $z$ は純虚数でした。つまり右辺の $\displaystyle \frac{c-1}{c+1}$ は純虚数になってはいけない、ということです。そうは言っても、右辺が純虚数でないことを検証する方法を考えなければなりません。

そこで複素数を、$c=x+yi$ という形に変換して検証してみます。

これもしばしば使うテクニックだから覚えておいて。

また、$c$ は半径 $1$ の円になるので三平方の定理を使って、$x^2+y^2=1$ という関係も作ることができます。

$c=x+yi$ とすると
$\displaystyle z\not =\frac{x-1+yi}{x+1+yi}$
また、$x^2+y^2=1$ より
$y=\sqrt{1-x^2}$
$\displaystyle z\not =\frac{x-1+\sqrt{1-x^2}i}{x+1+\sqrt{1-x^2}i}$

分母に $i$ があるからとりあえず有理化。

右辺について
$\displaystyle \frac{(x-1+\sqrt{1-x^2}i)(x+1-\sqrt{1-x^2}i)}{(x+1+\sqrt{1-x^2}i)(x+1-\sqrt{1-x^2}i)}$
$\displaystyle =\frac{x^2-1-(x-1)\sqrt{1-x^2}i+(x+1)\sqrt{1-x^2}i+1-x^2}{(x+1)^2+1-x^2}$
$\displaystyle =\frac{(-x+1+x+1)\sqrt{1-x^2}i}{x^2+2x+1+1-x^2}$
$\displaystyle =\frac{2\sqrt{1-x^2}i}{2x+2}$
$\displaystyle =\frac{\sqrt{1-x^2}}{x+1}i$

ここまで来たら次に純虚数ではないとなる条件を考える。$x$ は実数だからどんな値を代入しても式は純虚数になる。でも分母をみると $x+1$ だから $x=-1$ のときに式が成り立たなくなるよね。

$x$ が $-1$ 以外のとき、右辺は純虚数となり矛盾する。よって $x=-1$
また、$x^2+y^2=1$ より $y=0$。よって $c=-1$

これが背理法による証明。

でも、$x=-1$ って代入できないんですよね。

もともと $w\not =-1$ という条件だったよね。仮に右辺が純虚数になるとするなら、それに当てはまる $z$ が存在して、そこからさかのぼって $w=-1$ が成り立つことになる。でもそうならないっていう条件が $c=-1$ ということ。つまり、$c=-1$ なら $z$ を表すことができない。だから$w\not =-1$ であるという論理が成り立つの。背理法ってややこしいね。そこで、このままでは怪しいと思ったら確かめ算をやるとよい。

$c=-1$ のとき $b=1$ である
与式に代入すると
$\displaystyle w=\frac{z+1}{1-z}$
$w(1-z)=z+1$
$w-wz=z+1$
$-wz-z=1-w$
$wz+z=w-1$
$(w+1)z=w-1$
$\displaystyle z=\frac{w-1}{w+1}\enspace(w\not =-1)$

これは $c=-1$ のとき $w=-1$ だと $z$ が成り立たないということ。でも、$z$ は純虚数として存在しているんだから、$w\not = -1$ のときに $z$ が存在する。これで条件に合う。

ややこしい。

よって
$a=1,b=1,c=-1$ (答え)

最後に $C$ を求める。もともと $|w|=1$ だから半径 $1$ の円になるんだけど、一応式を作っておく。これも確かめ算。

$\displaystyle w=\frac{z+1}{1-z}$
$\displaystyle w\bar w=\frac{z+1}{1-z}\cdot\frac{\bar z+1}{1-\bar z}$
$\displaystyle =\frac{z\bar z+z+\bar z+1}{1-\bar z-z+z\bar z}$
条件 $z+\bar z=0$ より
$\displaystyle =\frac{1+z\bar z}{1+z\bar z}=1$
よって
$|w|=1$
また、$z\not =-1$ より、$w$ は原点を中心とする半径 $1$ の円から $w=-1$ を除いた部分。

今回のポイントは背理法。式が矛盾することを使って値を定める方法をマスターしてね。