【数Ⅲ数列の極限・複素数平面】数列を偶数列と奇数列に分けて考える 階差数列の初項の考え方

このページでマスターしたいこと:偶数列と奇数列で異なる数列になる場合、漸化式から階差数列を求める方法、数列の極限


$\alpha$ は $0<|\alpha|<1$ を満たす虚数であるとする。複素数平面上の点の列 $z_1,z_2,z_3,\cdots$ を、
$z_1=0,z_2=1$ および
$\begin{cases}z_{2n+1}-z_{2n}=\alpha(z_{2n}-z_{2n-1})\\z_{2n+2}-z_{2n+1}=\bar \alpha(z_{2n+1}-z_{2n})\end{cases}$
で定める。だたし、虚数とは虚部が $0$ でない複素数のことであり、また、$\bar\alpha$ は $\alpha$ に共役な複素数を表すものとする。このとき以下の問いに答えよ。(岡山大)
(1) 次の等式が成り立つことを示せ。
$z_{2n+2}-z_{2n}=|\alpha|^2(z_{2n}-z_{2n-2})\enspace(n=2,3,4,\cdots)$
(2) 偶数番目の点の列 $z_2,z_4,z_6,\cdots$ および奇数番目の列 $z_1,z_3,z_5,\cdots$ は、それぞれ同一直線上にあることを示せ。
(3) $\displaystyle \lim_{n\rightarrow\infty}|z_n-w|=0$ を満たす複素数 $w$ を求めよ。


今回は複素数あんまり関係なくて数列の問題だと思った方がいい。問題文から数列を2つに分けることを推測したりとかトリッキーだけど大事な要素があるから一緒に考えるよ。

式同士を足してみる

(1)から取り掛かります。まず問題文の式に番号を振っておきましょう。

$\begin{cases}z_{2n+1}-z_{2n}=\alpha(z_{2n}-z_{2n-1})\cdots\text{①}\\z_{2n+2}-z_{2n+1}=\bar \alpha(z_{2n+1}-z_{2n})\cdots\text{②}\end{cases}$

今回は特に言えることだけど、式に番号を振っておくの大事。これやらないと後で自分が何やってるか分からなくなって迷子になるよ。

証明する式から逆算で考えていきます。左辺を見て $z_{2n+1}$ を消したものが証明する式であることに気づくでしょう。そこで
①+②
$z_{2n+2}-z_{2n}=\alpha(z_{2n}+z_{2n-1})+\bar\alpha(z_{2n+1}-z_{2n})\cdots\text{③}$
今度は右辺を調整します。①と③を見ると $\alpha(z_{2n}-z_{2n-1})$ の部分が共通しています。また、証明する式の右辺に $z_{2n-2}$ があるので、②の式を変形して $z_{2n-2}$ を作ってみます。
$z_{2n}-z_{2n-1}=\bar\alpha(z_{2n-1}-z_{2n-2})\cdots\text{④}$
こうすると、$z_{2n-1}-z_{2n-2}$ の部分が③と共通します。こうやって共通する部分を作ったうえで
①、④を③に代入すると
$z_{2n+2}-z_{2n}=\alpha\bar\alpha(z_{2n-1}-z_{2n-2})+\alpha\bar\alpha(z_{2n}-z_{2n-1})\\=|\alpha|^2(z_{2n}-a_{2n-2})\cdots\text{⑤}$(答え)

公式 $z\bar z=|z|^2$ だから、$\alpha\bar\alpha=|\alpha|^2$ になるよ。

階差数列を考える

(2)に進みます。⑤の項は $2n+2,2n,2n-2$ となっていてどれも偶数であることに気づきましょう。ここから偶数の項である $z_2,z_4,z_6,\cdots$ を考えればよいです。

ということは、奇数の項である $z_1,z_3,z_5,\cdots$ の式も必要です。そこで今まで作った式を見て、とりあえず左辺が奇数の項の組み合わせになる式を作れないか考えてみます。

んー、①と④でいける?

正解。

①+④
$z_{2n+1}-z_{2n-1}=\alpha(z_{2n}-z_{2n+1})+\bar\alpha(z_{2n-1}-z_{2n-2})\cdots\text{⑥}$
左辺が出来たので今度は右辺も奇数の項の式になるように調整します。

$z_{2n}-z_{2n+1}$ の形は④にあるね。でも $z_{2n-1}-z_{2n-2}$ の部分が見当たらないから、式変形で作るよ。

①の項数を2減らして
$z_{2n-1}-z_{2n-2}=\alpha(z_{2n-2}-z_{2n-3})\cdots\text{⑦}$
④、⑦を⑥に代入して
$z_{2n+1}-z_{2n-1}=\alpha\bar\alpha(z_{2n-1}-z_{2n-2})+\alpha\bar\alpha(z_{2n-2}-z_{2n-3})\\=|\alpha|^2(z_{2n-1}-z_{2n-3})\cdots\text{⑧}$
これで、奇数の項の式ができました。

で、これはどちらも階差数列になる。

どういうこと?

⑤の式で考えてみましょう。例えば、$n=2$ なら式は
$z_6-z_4=|\alpha|^2(z_4-z_2)$ となります。これは $z_4$と$z_2$ の差に $|\alpha|^2$ をかけると $z_6$ と $z_4$ の差になるということです。
たとえば、$z_8$ を求めるなら
$z_8=z_2+(z_4-z_2)+(z_4-z_2)|\alpha|^2+(z_4-z_2)|\alpha|^4$
となります。

つまりこれ、公比が  $|\alpha|^2$ の等比数列を足し合わせていってるよね。階差の部分が等比数列になってる。

ここで $|\alpha|^2$ は絶対値なので実数です。$z_4-z_2$ は $z_2$ から $z_4$ に引いた直線のことであり、$z_6-z_4$ は $z_4$ から $z_6$ に引いた直線のことです。問題文より $|\alpha|$が1より小さいなら、$|\alpha|^2$ も1より小さい数になるはずです。そして、$|\alpha|^2$ 倍するということは線の長さが徐々に短くなるということです。

そして項が進むと無限に小さくなって、ある点に収束する。

収束の話は(3)で使います。ここでは、一直線になることを証明するのでした。よって、
⑤、⑧より
$z_{2n},z_{2n+1}$ は階差数列であり、項を実数倍したものをその項に加えたものが次の項になるので、一直線である。(答え)

実数倍で直線なの?
直線になるよ。逆に言うと、実数じゃなくて複素数をかけると回転するんだったよね?でも複素数じゃなくて実数をかけると回転しないで長さが長くだけだった。
あー、そうだった。

階差数列の初項に注意する

(3)に進みます。

これ、何やったらいいの?
これ、見た目に騙されないでね。$\displaystyle \lim_{n\rightarrow\infty}|z_n-w|=0$ は例えば $z_n$ の極値が $100$ だったとするじゃない?そのとき $|100-100|=0$ ってなる。つまり、$w$ を求めよってのは $z_n$ の極値を求めよってのと同じこと言ってるだけなの。

ややこしい。

ここから $z_n$ の極値を考えてみます。(2)の問題文より数列を偶数の項と奇数の項で分けて考えると良さそうです。上で解いた問題は次の問題のヒントになることが多いので見逃さないように。

で、数列の極限を考えるためには一般項が必要になる。だから偶数の項と奇数の項に分けて一般項を求めてみてね。ヒント出すと、両者の極値は同じになるよ。
頑張ってみたけどどうしても奇数列と偶数列で極値が一致しないです。等比数列の和で一般項出ますよね?
それで合ってるよ。ちなみに奇数列の初項はいくら?
$0$ です。
そうだね。今回階差数列になっててそれが等比なんだけど、階差数列の初項を $0$ にしたらダメよ。

はあ? $z_1=0$ ですよ。

忘れがちですが、階差数列の初項と数列の初項は別です

階差数列
数列 $a_n$ の階差数列を $b_n$ とすると
$\displaystyle b_n=a_{n+1}-a_n,\enspace a_n=a_1+\sum_{k=1}^{n-1} b_k\enspace(n\geqq 2)$

こうやって定義を振り返ると、$a_n$ と $b_n$ は別な数列なんだから初項も異なる。

このままではらちが明かないのでそれぞれの項を一度計算して、そこから一般項を考えていきましょう。

$z_1=0,z_2=1$
①より
$z_3-z_2=\alpha(z_2-z_1)\\z_3=1+\alpha(1-0)\\z_3=1+\alpha$
②より
$z_4-z_3=|\bar\alpha|(z_3-z_2)$
$z_4=1+\alpha+\bar\alpha(1+\alpha-1)$
$z_4=1+\alpha+|\alpha|^2$
①より
$z_5-z_4=\alpha(z_4-z_3)$
$z_5=1+\alpha+|\alpha|^2+\alpha(1+\alpha+|\alpha|^2-1-\alpha)$
$z_5=1+\alpha+|\alpha|^2(1+\alpha)$
②より
$z_6-z_5=\bar\alpha(z_5-z_4)$
$z_6=1+\alpha+|\alpha|^2(1+\alpha)+\bar\alpha(1+\alpha+|\alpha|^2+\alpha|\alpha|^2-1-\alpha-|\alpha|^2)$
$z_6=1+\alpha+|\alpha|^2+|\alpha|^2(\alpha+|\alpha|^2)$

途中式省いたけど、ノートに書いて実際計算してみてね。

まずは奇数列の一般項から考えます。各項を並べると

$z_1=0$
$z_3=1+\alpha$
$z_5=1+\alpha+|\alpha|^2(1+\alpha)$

初項 $0$ だとそれに公比かけても $0$ になるから全部 $0$ になってしまうでしょ。$z_5$ をよく見ると、$|\alpha|^2(1+\alpha)$ だから、初項 $1+\alpha$ で考えるとうまくいくんじゃない?

そういうこと!

ということで、初項 $1+\alpha$ 公比 $|\alpha|^2$ の極限を考えましょう。

無限等比級数の和
$\displaystyle\frac{a}{1-r}$ (初項 $a$ 公比 $r$)

階差数列になってるときの一般項は、初項に階差数列の和を足せば良かった。

よって、
$\displaystyle\lim_{n\rightarrow\infty} z_{2n+1}=0+\frac{1+\alpha}{1-|\alpha|^2}$
$\displaystyle =\frac{1+\alpha}{1-|\alpha|^2}$
次に偶数列を並べてみると
$z_2=1$
$z_4=1+\alpha+|\alpha|^2$
$z_6=1+\alpha+|\alpha|^2+|\alpha|^2(\alpha+|\alpha|^2)$

今度は初項を $\alpha+|\alpha|^2$ で考えればいいよね。

よって極限を求めると
$\displaystyle\lim_{n\rightarrow\infty} z_{2n+2}=1+\frac{\alpha+|\alpha|^2}{1-|\alpha|^2}$
$\displaystyle =\frac{1-|\alpha|^2+\alpha+|\alpha|^2}{1-|\alpha|^2}$
$\displaystyle =\frac{1+\alpha}{1-|\alpha|^2}$

極限一致しました。

よって
$\displaystyle =\frac{1+\alpha}{1-|\alpha|^2}$ (答え)