各項の差が等比数列になる階差数列/漸化式がn×(等比数列)になる数列の一般項を求める(神戸大2015文系第2問)

数列 $\{a_n\},\{b_n\},\{c_n\}$ が $a_1=5,b_1=7$ をみたし,さらにすべての実数 $x$ とすべての自然数 $n$ に対して

$\displaystyle x(a_{n+1}x+b_{n+1})=\int_{\small{c_n}}^{\small{x+c_n}}(a_nt+b_n)\space dt$

をみたすとする。以下の問に答えよ。

(1) 数列 $\{a_n\}$ の一般項を求めよ。

(2) $c_n=3^{n-1}$ のとき,数列 $\{b_n\}$ の一般項を求めよ。

(3) $c_n=n$ のとき,数列 $\{b_n\}$ の一般項を求めよ。

係数を比べる

(1)から始めます。

まずは,右辺を積分してみましょう。

$\displaystyle\int_{\small{c_n}}^{\small{x+c_n}}(a_nt+b_n)\space dt$
$=\Big[\cfrac{1}{2}a_nt^2+b_nt\Big]_{\small{c_n}}^{\small{x+c_n}}$
$=\cfrac{1}{2}a_n(x+c_n)^2+b_n(x+c_n)-\cfrac{1}{2}a_n{c_n}^2-b_nc_n$
$=\cfrac{1}{2}a_nx^2+a_nc_nx+\cfrac{1}{2}a_n{c_n}^2+b_nx+b_nc_n-\cfrac{1}{2}a_n{c_n}^2-b_nc_n$
$=\cfrac{1}{2}a_nx^2+(a_nc_n+b_n)x$

よって,与式は

$a_{n+1}x^2+b_{n+1}x=\cfrac{1}{2}a_nx^2+(a_nc_n+b_n)x$

ここで,左辺と右辺の係数を比べると

$a_{n+1}=\cfrac{1}{2}a_n$ ・・・①
$b_{n+1}=a_nc_n+b_n$ ・・・②

が成り立ちます。

①より,$a_n$ は初項 5,公比 $\cfrac{1}{2}$ の等比数列だから,一般項は

$a_n=5\Big(\cfrac{1}{2}\Big)^{n-1}$ (答え)

等比数列になる漸化式

(2)に進みます。

(1)より

$b_{n+1}=a_nc_n+b_n$

$a_n$ の一般項と $c_n=3^{n-1}$ を代入すると

$b_{n+1}=3^{n-1}\cdot5\Big(\cfrac{1}{2}\Big)^{n-1}+b_n$

式を整理しましょう。

$b_{n+1}=3^{n-1}\cdot5\cdot\cfrac{1}{2^{n-1}}+b_n$
$=5\Big(\cfrac{3}{2}\Big)^{n-1}+b_n$

$b_{n+1}-b_n=5\Big(\cfrac{3}{2}\Big)^{n-1}$

2 つの項の差がある数列になるパターンを階差数列って言った。
どう考えたらいいんですか。

数列を順番に作っていくと

$b_1=7$
$b_2=7+5$
$b_3=7+5+5\cdot\cfrac{3}{2}$
$b_4=7+5+5\cdot\cfrac{3}{2}+5\Big(\cfrac{3}{2}\Big)^2$
$b_5=7+\underbrace{5+5\cdot\cfrac{3}{2}+5\Big(\cfrac{3}{2}\Big)^2+5\Big(\cfrac{3}{2}\Big)^3}_{\textsf{等比数列の和}}$
$\vdots$

となります。

$b_n$ は,初項に等比数列の和を加えたものです。

階差の部分が等比数列になるのは入試問題としては頻出パターン。

よって,$b_n$ の一般項は

$\displaystyle b_n=7+\sum_{k=1}^{n-1}5\Big(\cfrac{3}{2}\Big)^{k-1}$

初項 $a$,公比 $r$ の等比数列の初項から第 $n$ 項までの和 $S_n$ は
$S_n=\cfrac{a(1-r^n)}{1-r}$ または $S_n=\cfrac{a(r^n-1)}{r-1}$

$b_n=7+\cfrac{5\Big\{\Big(\cfrac{3}{2}\Big)^{n-1}-1\Big\}}{\cfrac{3}{2}-1}$

ここ,$n-1$ 乗にするか $n-2$ 乗にするか迷います。
上の $b_5$ 見たら分かるけど,$n=5$ のとき等比数列のところは項が 4 つあるでしょ?つまり $n-1$ だよね。累乗の部分は項の数だから $n-1$ 乗する。

$b_n=7+\cfrac{5\Big\{\Big(\cfrac{3}{2}\Big)^{n-1}-1\Big\}}{\cfrac{1}{2}}$
$b_n=7+10\Big\{\Big(\cfrac{3}{2}\Big)^{n-1}-1\Big\}$
$=10\Big(\cfrac{3}{2}\Big)^{n-1}-3$ (答え)

漸化式がn×(等比数列)の数列の一般項

(3)に進みます。

$c_n=n$ とすると

$b_{n+1}=na_n+b_n$
$b_{n+1}-b_n=5n\Big(\cfrac{1}{2}\Big)^{n-1}$

2 つの項の差は等比数列ではありません。今度は,数列の和を引き算して一般項を求めてみましょう。

$b_n=7+\cfrac{5}{2^0}+\cfrac{10}{2^1}+\cfrac{15}{2^2}+\cfrac{20}{2^3}+\cdots+\cfrac{5(n-1)}{2^{n-2}}$

最後が $\cfrac{5(n-1)}{2^{n-2}}$ になるのがピンとこない。
これも順番に書いてみると分かる。

$b_1=7$
$b_2=7+\cfrac{5}{2^0}$
$b_3=7+\cfrac{5}{2^0}+\cfrac{5\cdot2}{2^1}$
$b_4=7+\cfrac{5}{2^0}+\cfrac{5\cdot2}{2^1}+\cfrac{5\cdot3}{2^2}$
$\vdots$

最後の項を見てみましょう。分子は $b_4$ なら 5 に 3 をかけています。つまり,$b_n$ なら 1 つ減らして $n-1$ をかけます。

分母は $b_4$ なら 2 の 2 乗です。今度は $b_n$ なら 2 つ減らして $2^{n-2}$ とすればよいことになります。

このあたりは理屈こねるより具体例で考えた方が話が速い。

次に,$\cfrac{1}{2}b_n$ を作ります。

何で?
やってみると分かる。

$\cfrac{1}{2}b_n=\cfrac{7}{2}+\cfrac{5}{2}+\cfrac{10}{2^2}+\cfrac{15}{2^3}+\cdots+\cfrac{5(n-2)}{2^{n-2}}+\cfrac{5(n-1)}{2^{n-1}}$

最後の分母が $2^{n-1}$ になるのが分かりません。

$b_n$ を求めたときの最後の項は $\cfrac{5(n-1)}{2^{n-2}}$ だったので,要はこれに $\cfrac{1}{2}$ をかけたもの,ということです。

$\cfrac{5(n-1)}{2^{n-2}}\times\cfrac{1}{2}=\cfrac{5(n-1)}{2^{n-2+1}}$
$=\cfrac{5(n-1)}{2^{n-1}}$

引き算します。

$\begin{matrix}b_n&=7&+\cfrac{5}{2^0}&+\cfrac{10}{2}&+\cfrac{15}{2^2}&+\cfrac{20}{2^3}&+\cdots&+\cfrac{5(n-1)}{2^{n-2}}\\-\cfrac{1}{2}b_n&=\cfrac{7}{2}&&+\cfrac{5}{2}&+\cfrac{10}{2^2}&+\cfrac{15}{2^3}&+\cdots&+\cfrac{5(n-2)}{2^{n-2}}&+\cfrac{5(n-1)}{2^{n-1}}\\\hline\cfrac{1}{2}b_n&=\cfrac{7}{2}&+5&+\cfrac{5}{2}&+\cfrac{5}{2^2}&+\cfrac{5}{2^3}&+\cdots&+\cfrac{5}{2^{n-2}}&-\cfrac{5(n-1)}{2^{n-1}}\end{matrix}$

こうすると,5 から $\cfrac{5}{2^{n-2}}$ までが等比数列になることが分かります。これで一般項が求められそうです。

これ,パターン?
パターン。$nr^{n-1}$ みたいに等比数列に $n$ をかけてるヤツはこれで解く。
等比数列の和を求めるけど,項の数分かる?
んー,$\cfrac{5}{2}$ から $\cfrac{5}{2^{n-2}}$ までで $n-2$ 個ってことですよね。
合ってるよ。
それに 5 があるから,全部で $n-1$ 個ですか?
それで正解。

よって

$\cfrac{1}{2}b_n=\cfrac{7}{2}+\cfrac{5\Big\{1-\Big(\cfrac{1}{2}\Big)^{n-1}\Big\}}{1-\cfrac{1}{2}}-\cfrac{5(n-1)}{2^{n-1}}$
$=\cfrac{7}{2}+10\Big\{1-\Big(\cfrac{1}{2}\Big)^{n-1}\Big\}-\cfrac{5(n-1)}{2^{n-1}}$
$=\cfrac{7}{2}+10\Big\{1-\Big(\cfrac{1}{2}\Big)^{n-1}\Big\}-\cfrac{5(n-1)}{2^{n-1}}$

よって

$b_n=7+20\Big\{1-\Big(\cfrac{1}{2}\Big)^{n-1}\Big\}-\cfrac{5(n-1)}{2^{n-2}}$

最後のところが $2^{n-2}$ になるのがいまいちピンと来ませんが。
要するに,$\cfrac{1}{2^{n-1}}$ の 2 倍だよね。

$\cfrac{1}{2^{n-1}}\times2=\cfrac{1}{2^{n-1}}\times\cfrac{1}{2^{-1}}$
$=\cfrac{1}{2^{n-1-1}}=\cfrac{1}{2^{n-2}}$

となります。

$b_n=7+20-20\Big(\cfrac{1}{2}\Big)^{n-1}-\cfrac{5(n-1)}{2^{n-2}}$
$=27-\cfrac{20}{2^{n-1}}-\cfrac{5(n-1)}{2^{n-2}}$
$=27-\cfrac{10}{2^{n-2}}-\cfrac{5(n-1)}{2^{n-2}}$
$=27-\cfrac{5n-5}{2^{n-2}}$
$=27-\cfrac{5(n-1)}{2^{n-2}}$ (答え)