古代人類は狩りが下手だった 人類の脳を発達させたのは肉食ではなく骨髄かもしれない

アフリカ大陸で誕生した人類が他のサルと最も異なっていたところは、その大きな脳です。人類が大きな脳を持つようになったのは、それまで果物などに依存して生きてきた類人猿がサバンナで狩りをするようになり、肉食によって豊富な栄養を得たからだと考えられています。しかし、人類が脳を発達させた理由は厳密に言えば肉食のおかげではないと考える調査が発表されています。

”骨の外側の肉を採取することは非常にコストがかかることであった、と筆者は主張する。死体から生の肉を解体しているときに捕食者に遭遇する可能性が高かった。それに特化した歯を持たずに生の肉を咀嚼することはエネルギー効率の点でかなり不利であったことを論文は示している。その上、自然にさらされた肉はあっという間に腐敗する。”

サバンナに投げ出された人類は捕食者として生き残った

人類が誕生したアフリカにはもともと広大なジャングルが広がっていたと考えられています。しかし、地殻の移動に伴う気候変動のせいで、アフリカの東側はサバンナと呼ばれる草原地帯に変化します。すると、人類の祖先であったサルの一種は森の中で十分な食料を確保できなくなり、やがて森と草原を行ったり来たりする生活を送るようになります。

その頃から人間は二足歩行に進化し、また脳が巨大化します。知能が進化すると道具を使って狩りをするようになり、現在の私たちホモサピエンスに近い人類が誕生しました。

人間の脳がある日突然巨大化した理由ははっきりしていません。そうした変化は他の動物では見られないからです。今のところ、人間の脳が巨大化したのはサバンナで他の動物を捕まえて食べるようになった結果、たんぱく質や脂質などの栄養分が豊富になったからだと考えられています。

しかし、研究者はそれに疑問を投げかけています。人間はそれほど優れたハンターではなく、動物の肉を食べるだけで生き延びていたわけではないことを示唆しているのです。

人類は骨髄を栄養源にしていたかもしれない

研究者の主張によれば、人間は動物の骨を砕くことで骨の中にある骨髄を栄養源としていた可能性があります。動物の骨には骨髄液という液体が詰まっています。骨髄は特に油脂が豊富で、人類は骨の中にある骨髄液を利用してきました。例えばモンゴルで放牧生活を営んでいる人々は羊の骨を鍋で煮ることで、そこから油を取り出して燃料や食料として用いています。

恐らく当時の人間は、ライオンのような肉食動物が獲物を食べ終えた場所に残された骨を拾い集め、岩場に持っていき、その骨を岩に打ち砕いて骨髄液を吸っていたのでしょう。もともとジャングルで果物を食べていたサルがサバンナで最強のハンターに成長するまでには、こうした地味な下積み時代があったのかもしれません。しかし、その人類もアフリカでハンターとしての地位を確立すると、個体数が増え、やがて新たなエサ場を求めアフリカ大陸を飛び出していくことになるのです。