コインランドリーを図書館に 子供たちに学習環境を提供する都市のデザイン
コインランドリーを図書館にしようという取り組みがアメリカで始まっています。これは識字率の低い低所得家庭の未就学児たちを対象としたものですが、なぜコインランドリーで行おうとしているのか、その理由はなかなか興味深いものがあるようです。
”両親が洗濯をするのに忙しい間、子供は一人で読書と数学の技能に取り組み、創造的になり、他の子供たちと遊ぶことができる。子供の環境は彼らの行動、他の人と交流する意欲、そして感情の発達に影響を与える。私の望みは、子供たちが遊び、絵を描き、そして手軽に本が読める魅力的な場所を作ることが、識字能力の5つの本質的なスキル(読む、書く、歌う、遊ぶ、聞く)を身に付けるのに役立つことであり、それらは読解力の基礎を築く。”
コインランドリーを図書館に変える発想
アメリカでは経済的貧困によって識字率が低下するという問題が起こっています。低所得家庭の子供たちは、本を読む機会が少なく、両親が仕事で忙しいため親子で会話をする機会がありません。そして、これらの人々の中にはスペイン語を母語とする人々が数多く含まれています。このような環境で育った子供たちが小学校に入ったとき、周りの児童に比べて文字を読む能力が初めから劣っているために、その後学校での勉強で苦労し続けることになるのです。
そこでクリントン財団などいくつかの団体が支援して、コインランドリーで子供たちが本を読み、勉強できる機会を設けようという活動が広がっています。
なぜ、コインランドリーなのか。それは、平均的なアメリカ人はコインランドリーで週に2時間過ごしており、また低所得世帯ほどコインランドリーを利用する割合が高いからです。しかしながら、親に連れられてコインランドリーにやってきた幼い子供たちは、洗濯が終わるまでの退屈な時間をそこで過ごさなければなりません。
そこで、これまでただ時間をつぶして待つだけであったコインランドリーの空間を図書館に変えてしまおう、というわけです。
子どもたちに学習環境を提供する都市のデザイン
都市の課題に取り組むシンクタンクの建築家イタイ・パルティは、実用性と効率を優先して構築された都市環境の中では、子供たちは経験を得ることができないと述べています。そのため、彼はバス停やスーパーマーケットのような場所を子どもたちの学習の場に変える取り組みを提唱しています。
子供は自然の中でのびのびと育てた方が良いと考える人も多いでしょう。自然の環境には様々な動物や昆虫がいて、山や川などの変化に富んだ地形や季節による変化があり、子供たちがその中から自発的に学習できる要素が揃っています。つまり、環境に教材が組み込まれているということです。一方で都市には勉強できる場所自体はたくさんあるかもしれませんが、そこにアクセスできるかどうかは家庭の所得に左右されます。パルティは都市には環境自体から刺激を受けて何かを学ぶ要素が少ないと考えているのです。
今回紹介したプロジェクトは低所得層の未就学児をターゲットにしたものですが、都市のあらゆる場所に知的好奇心を刺激する仕掛けが作られていくことで都市がもっとわくわくする空間に変化していくなら、それは子供たちだけなく都市に住むあらゆる人々にとって意味のあることではないでしょうか。
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