【数Ⅲ複素数平面】点Zの全体が表す図形


複素数平面上の点 $z$ が $|4-3i-iz|=2$ を満たすとする。このとき,点 $z$ の全体が表す図形を求めよ。(鹿児島大・改)

ここで学習すること

公式 $z\bar{z}=|z|^2$
文字,実数,虚数におけるバー(棒)の取り扱い。
$(z+a)(\bar{z}+b)$ 型の因数分解

どういう図形になるのか想像つかない。
z全体の表す図形は円になることが多い。そこで,たぶん $|z-\bigcirc\bigcirc|=$ 半径 みたいな形になるんだろな,と思いながら式を変形する。たまに垂直二等分線のこともあるけど,式変形していくうちに判断できれば良い。数IIIはいったんゴール地点を一回決めるの大事。

$z\bar{z}=|z|^2$ が成り立つ仕組み

絶対値があるので,$z\bar{z}=|z|^2$ の公式を思い出しましょう。

なんでその公式成り立つの?

たとえば $z=a+bi$ とするとき,$\bar{z}=a-bi$ を共役(きょうやく)な複素数と言いました。

複素数 $i$ がついてる項の符号をひっくり返すんだった。

$z\bar{z}$ を計算すると

$z\bar{z}=(a+bi)(a-bi)$
$=a^2-abi+abi+b^2$
$=a^2+b^2$

また,原点から点 $z$ までの距離は,三平方の定理を使って $\sqrt{a^2+b^2}$ となります。

原点から点 $z$ までの距離は $|z|$ で表します。絶対値=距離はベクトルと同じ考え方です。

よって

$|z|=\sqrt{a^2+b^2}$

両辺を2乗して

$|z|^2=a^2+b^2$

つまり

$z\bar{z}=(a+bi)(a-bi)=a^2+b^2=|z|^2$

たまたま $z\bar{z}=|z|^2$ が成り立つので,便利だから公式として使っちゃえ!ってなったの。
たまたまとかアリなの?
アリ。ちゃんと成り立っていて役に立つなら問題ない。

複素数におけるバー(棒)の取り扱いをマスターする

問題に戻ります。

$|4-3i-iz|=2$

両辺を2乗して

$|4-3i-iz|^2=4$

公式 $z\bar{z}=|z|^2$ より

$(4-3i-iz)(\overline{4-3i-iz})=4$

ここから

$(4-3i-iz)(4+3i+i\bar{z})=4$

バー外すところが分からないです。

まず $\overline{4-3i-iz}$ を分解して,$\overline{4}\enspace\overline{-3i}\enspace\overline{-iz}$とします。

このとき,共役な複素数とは $i$ が付いてる項の符号をひっくり返すってことだよね。

$4$ を無理やり複素数で表すと $4+0i$ となります。その共役な複素数は $4-0i$ だから,結局 $4$ です。

次の $\overline{-3i}$ はどうなる?
$3i$ ですか?
そういうこと。$0-3i$ って考えれば共役な複素数は $0+3i$,つまり $3i$ でオッケー。
じゃあ,$\overline{-iz}$ は?
$+iz$ ですか?
それ間違い。$-i$ の共役な複素数は $+i$ でいいけど,$z$ の共役な複素数は $\bar{z}$ だから。
何で?

$z$ はそれ自体が複素数であり,その中身には $a+bi$ のように実数と虚数の部分が入っています。実数の部分の符号はひっくり返したらダメだから,$\overline{-z}=+z$ にはできません。

$z=a+bi$ として

$\overline{-iz}=\overline{-i}\enspace\overline{(a+bi)}$
$=i(a-bi)$
$=i\bar{z}$

$z$ の共役な複素数は符号変えても表現できないから,$\bar{z}$ とするしかないの。

(z+a)(z+b)型の因数分解

問題に戻ります。

$(4-3i-iz)(4+3i+i\bar{z})=4$は実は裏技っぽいのが使えるんだけど,ここは一回地道にいく。

式を展開すると

$16+12i+4i\bar{z}-12i+9+3\bar{z}-4iz+3z+z\bar{z}=4$

式を整理して

$z\bar{z}+(3-4i)z+(3+4i)\bar{z}+21=0$

で,ここから?
ゴール地点は円だったよね?円に持っていくから,$(z+a)(\bar{z}+b)=$半径 みたいな形に持っていきたいの。そこで,因数分解。
因数分解できる感じがしませんが。

ここで,たとえば $(z+a)(\bar{z}+b)$ を展開すると

$(z+a)(\bar{z}+b)=z\bar{z}+bz+a\bar{z}+ab$

となります。これを与式と並べてみると

$z\bar{z}+bz+a\bar{z}+ab$
$z\bar{z}+(3-4i)z+(3+4i)\bar{z}+21=0$

上の $b$ が 下の $3-4i$,$a$ が $3+4i$ に当てはまります。

つまり $z\bar{z}+(3-4i)z+(3+4i)\bar{z}$ の部分を因数分解すると

$\{z+(3+4i)\}\{\bar{z}+(3-4i)\}-(3+4i)(3-4i)$

となります。

$\{z+(3+4i)\}\{\bar{z}+(3-4i)\}$ を展開すると,$(3+4i)(3-4i)$ が余計な部分として出てくるので,それを引いてつじつまを合わせましょう。

よって,与式は

$\{z+(3+4i)\}\{\bar{z}+(3-4i)\}-(3+4i)(3-4i)+21=0$

式を整理して

$(z+3+4i)(\bar{z}+3-4i)-(9+16)+21=0$
$(z+3+4i)(\bar{z}+3-4i)-4=0$

$-4$ を右辺に移項して

$(z+3+4i)(\bar{z}+3-4i)=4$
$(z+3+4i)(\bar{z}+\overline{3+4i})=4$
$(z+3+4i)(\overline{z+3+4i})=4$

ここで,公式 $z\bar{z}=|z|^2$ より

$|z+3+4i|^2=4$
$|z+3+4i|=2$

ふつうに2乗はずしていいの?
左辺は絶対値で必ずプラスの値だから,そのままはずしてオッケー。

したがって

中心が $(-3,-4)$ で半径 $2$ の円(答え)

i をカッコの外に取り出す方法

そういえば,裏技あるって言ってましたよね。

裏技は言い過ぎかもしれませんが

$(4-3i-iz)(4+3i+i\bar{z})=4$

これを円に持ち込むとすると $z$ に付いてる $i$ が邪魔です。

じゃあ,カッコの外に出せばいいよね。

つまり

$i^2(-4i-3-z)(-4i+3+\bar{z})=4$
$-1\cdot(-4i-3-z)(-4i+3+\bar{z})=4$
$(z+3+4i)(\bar{z}+3-4i)=4$

あとは一緒。$i$ を外に出すときに符号に注意してね。

この手はいつでも使えるわけではないので,まずは初めの解き方をしっかり身につけましょう。