ノンレム睡眠時に脳で起こっていること 深い眠りはノイズをカットする

人間の脳が情報を記憶する仕組みは科学の進歩とともに少しずつ明らかになってきています。通常、私たちが日中に経験したことは情報として脳の中心のあたりにある海馬と呼ばれる器官に蓄えられます。海馬はいわば短期記憶をつかさどる部分です。海馬の情報は時間をかけて次第に大脳皮質に送られ、情報が蓄えられます。海馬の情報はやがて完全に消えますが、大脳皮質の情報は長く保存されます。また、海馬はどの情報を大脳皮質に送るかを決めていて、不要と判断した情報を削除する役目も果たしています。

脳に記憶を定着させるためには睡眠が大切です。私たちが眠っている間、海馬は間隔を空けながら起きているときと同じような活動を行い、情報を大脳皮質に送ります。しかし、睡眠にはノンレム睡眠として知られる深い眠りの時間帯があり、このとき海馬から大脳皮質への情報伝達はストップしていると考えられています。

”沈黙の期間が海馬と大脳皮質の一連の情報交換や大脳皮質の機能的再編成を中断するのはなぜか。”

深い睡眠の間に記憶が定着する

脳が深い睡眠に入っているとき、脳にはデルタ波と言っていわばゆっくりとした周波数の電流が流れています。しかし深い睡眠の間は海馬から大脳皮質への情報伝達はストップしているため、デルタ波の役割ははっきりしていませんでした。

そこで、研究者はデルタ波が流れている時間に何が起こっているかを調べ、深い睡眠の間でも大脳皮質の一部が活動し記憶を形成していることを突き止めました。

デルタ波の役割はノイズフィルター

研究から分かったことは、人間が寝ている間に海馬はときどき動き出して、脳が深い睡眠に入っているとき大脳皮質のどの部分を活動させるさを決定し情報伝達を行っているようです。このとき活動する大脳皮質の部分とは、海馬から送り込まれた情報を定着させている部分です。どうも、デルタ波は大脳皮質に対して活動する部分と活動しない部分を切り分ける仕事をしていて、そうることで記憶を定着させる際に余計なノイズをカットしているようです。

これまでも、人間が情報を記憶するには睡眠が重要であると言われてきましたが、デルタ波の役割はこの考えを補強するものと言えそうです。