オープンソースの地図アプリが環境保護を可視化する エクアドルの石油採掘と先住民

019年4月、エクアドルの石油採掘のための土地の売却に関し、アマゾンに住む先住民の主張が認められ、売却が差し止めになる判決が下されました。裁判では先住民の人々とアマゾンの環境の関係を立証するため、ITテクノロジーを駆使した可視化が行われています。

“これらの地図は、訴訟において重要な役割を果たした。それらは、前後関係と状況を説明するのに用いられ、広大なエクアドルのアマゾンの中でコミュニティを見つけ出し、ワオラニ族が売却を巡り争っている特定の石油ブロックであるブロック22との重複を示した。この地図はまた、ワオラニ族の領土との関係に含まれる深い環境的、社会的、文化的、歴史的、そして精神的な知識を示すためにも使われた。”

オープンソースの地図作成ソフトが先住民の主張を可視化する

2019年4月26日、エクアドルの裁判所は、政府が計画していた石油採掘地の競売に対し、その土地に住むワオラニ族に対する事前の説明が不十分であったとして競売を無効とする判決を下しました。

先住民の権利の保護や環境保護の面で画期的な判決となったのですが、公判の過程で先住民の生活圏を主張するために活用されたのが地図でした。この地図はアメリカのデジタル・デモクラシーという団体が作成したマペオという地図作成ソフトを利用して作成されました。

サイトから無料でダウンロードできるので試しに使ってみましたが、表示される衛星写真の上に区域やポイントなどを書き加えていき、オリジナルの地図を作成していくようなアプリケーションです。うまく使えば、学術目的や環境保護だけでなく町歩きマップなども作れるのかもしれません。

今回の訴訟では、支援団体とワオラニ族の人々が協力して作り上げた詳細な地図によって、石油の採掘が彼らの生活圏をどのように破壊するのかを具体的に証明しています。実際に地図を見てみると、ワオラニ族の生活圏に住む多くの動物の行動範囲が示され、アリ塚や人々が生活のために利用しているヤシの木など、人々の暮らしとその自然環境の姿が地図として表現されています。

地図を作ることがなぜ重要なのか。それは、ワオラニ族の人々が自動車で容易に足を運ぶことはできず、小さなボートで川を何時間も上り、徒歩で到達しなければならないような場所に住んでいるからです。石油の採掘によって人々の暮らしと自然環境が破壊されると言ってもそこに具体的なイメージはなく、国の側からすれば住民の生活圏とはいわば抽象論のようなものだったのです。同時に先住民の人々にとっても、自分たちの生活圏を具体的に実証する方法は乏しかったと言えます。

Amazonfrontlinesのサイトでは、現代の環境保護運動が最新のテクノロジーを使って社会や法廷で説得力のあるアピールを行うようになっている様子を体験することができます。ドローンを駆使した映像は非常にインパクトがあります。ITテクノロジーは人々の権利を守るためにも活用することができることを示す、一つの先駆的な事例と言えるでしょう。