コロナ禍でも税収入が増えたアメリカの州-累進課税制度は貧しい人々をますます貧しくしているかもしれない

コロナが広がった2020年4月,アメリカの完全失業率は歴史上稀に見る上昇を示し,2020年2月には500万人前後だった失業者が4月には約2,300万人,率にして14.7パーセントに増大しました。これは,2008年のリーマンショックの10.0%を大きく上回ります(その後,2021年2月では6.2パーセントまで落ち着いている。)

失業者の急増は,アメリカの州の税収にも大きな与えることが予想されていました。しかし,実際には22の州で税収が増加しました。

なぜ,失業率が増加したのに税収が増えたのか,研究者による調査は累進課税制度にその理由があることを示唆しています。

高所得者はコロナの影響を受けなかった

ノースカロライナ州立大学プール・カレッジ・オブ・マネジメントの会計学助教授であるネイサン・ゴールドマンと,テキサス大学ダラス校のジンダル・スクール・オブ・マネジメントのギル・サドカは,2020年の所得税率構造,パンデミック対策,州の所得税収の相関関係を調べました。

その結果,累進的な所得税率を持ち,より強いコロナ対策を打ち出した州は,非累進的な所得税率を持ち,コロナによる規制が少なかった州に比べて,州所得税の徴収額が多いことがわかりました。

ゴールドマンは次のように述べています。

「直感に反するようですが,所得税の累進課税は,不平等を拡大させる政策を長引かせる可能性があります。パンデミックにおいて,コロナの規制は,結果的に接客の必要のない仕事に就いている人々を優遇しました。そのような仕事は賃金も高い傾向にあります。つまり,州のコロナ規制によって低収入の労働者は職を失い,高収入の労働者に有利に働く傾向があったのです。他の条件が同じであれば,これらの政策は州の税収を増加させる結果となったのです。」

ゴールドマンは,コロナ禍において,高所得者はますます裕福になるチャンスを手に入れたのではないかと推測しています。

「例えば,ノースカロライナ州の主要産業である銀行,バイオテクノロジー,製薬会社などは,パンデミックの間も忙しく働いていました。他の研究によると,いくつかの産業では,リモート社員を雇用し,リモートの需要に対応するためにさらに社員を雇用することによって生産性が向上しました。このように,賃金の高いリモート社員の中には,コロナ関連の制限によって,より賃金の高い仕事を見つけたり,現在の職務でより多くの賃金を得たりすることで,利益を得ることができました。これらの人々の賃金が低賃金労働者を犠牲にして増加したため,州の所得税徴収に利益をもたらしたのです。」

累進課税制度では高所得者の意見が優遇される

ゴールドマンは,累進課税制度は高所得者ほど多くの税金を納める仕組みであるため,政府が高所得者の好みに合う政策を選ぶ傾向があると指摘しています。

たとえば,カリフォルニアは米国で最も累進的な所得税を導入している州で,2万5千ドルの所得の人と最高税率の人では,税金に9.3%の差があります。そして,同州はコロナ関連の規制が最も厳しい州として,全米5位にランクインしています。カルフォルニアの2020年の税収は,2019年に比べて1.2パーセント増加しました。

調査は,累進課税制度が政府の税収を守った一方で,経済格差を増大させ,死者の増大に繋がるという意図せざる結果を生み出した可能性を指摘しています。