複素数の実部と虚部を求める/恒等式を満たす整数を求める(横浜国立大2020理系第2問)

次の問いに答えよ。

(1) 実数 $A,B,C,D$ に対して,複素数 $z$ を

$z=\cfrac{A+\sqrt{5}Bi}{C+\sqrt{5}Di}$

で定める。ただし,$C+\sqrt{5}Di\not=0$ とする。このとき,$z=x+yi$ をみたす実数 $x,y$ を $A,B,C,D$ の式で表せ。

(2) 次をみたす整数 $A,B,C,D$ を求めよ。

$\begin{cases}\cfrac{16+\sqrt{5}i}{29}=\cfrac{A+\sqrt{5}Bi}{C+\sqrt{5}Di}\\AD-BC=-1\\D>0\end{cases}$

分母を有理化する

(1)から始めます。

$z=x+yi$ の形にするということは,式を $i$ がついていない項(実部)と,$i$ がついている項(虚部)に分離するということです。

ここは分母を有理化して分母の $i$ をなくせば,うまくいきます。

$z=\cfrac{(A+\sqrt{5}Bi)(C-\sqrt{5}Di))}{(C+\sqrt{5}Di)(C-\sqrt{5}Di)}$
$=\cfrac{AC-\sqrt{5}ADi+\sqrt{5}BCi+5BD}{C^2+5D^2}$

$i^2=-1$ だから,とにかく符号ミスに気を付ける。

実部と虚部に分けます。

$=\cfrac{AC+5BD}{C^2+5D^2}+\cfrac{\sqrt{5}(BC-AD)}{C^2+5D^2}i$

したがって

$x=\cfrac{AC+5BD}{C^2+5D^2}$,$y=\cfrac{\sqrt{5}(BC-AD)}{C^2+5D^2}$

(答え)

恒等式を整理する

(2)に進みます。

ここは,問題文で $A,B,C,D$ は整数って言ってることに注意。これ見逃したらアウト。
見逃しました。解けませんでした。

一番上の式の右辺をよく見てみると,これは(1)の $z$ と同じ式です。

$\cfrac{16+\sqrt{5}i}{29}=z$
$\cfrac{16}{29}+\cfrac{\sqrt{5}}{29}i=\cfrac{AC+5BD}{C^2+5D^2}+\cfrac{\sqrt{5}(BC-AD)}{C^2+5D^2}i$

ここで,虚数の恒等式の性質を利用しましょう。

$a+bi=c+di$ のとき
$a=c$,$b=d$ が成り立つ。

よって

$\cfrac{AC+5BD}{C^2+5D^2}=\cfrac{16}{29}$ ・・・①
$\cfrac{\sqrt{5}(BC-AD)}{C^2+5D^2}=\cfrac{\sqrt{5}}{29}$ ・・・②

次に

$AD-BC=-1$ ・・・③
$BC-AD=1$

②に代入すると

$\cfrac{\sqrt{5}}{C^2+5D^2}=\cfrac{\sqrt{5}}{29}$
$C^2+5D^2=29$ ・・・④

①に代入すると

$\cfrac{AC+5BD}{29}=\cfrac{16}{29}$
$AC+5BD=16$ ・・・⑤

ここで,新しい式ができました。ここから,問題を解く糸口をさぐっていきます。④の方が文字が少ないので,こちらから攻めましょう。

$C^2=29-5D^2$

$C^2$ は整数だから,$1,4,9,\cdots$ のいずれかになります。また,$D>0$ ということは $D$ は正の整数なので,右辺が $1,4,9,\cdots$ のいずれかになる $D$ の値を調べてみると良いでしょう。

$D=2$ のとき
$C^2=29-5\cdot2^2$
$=9$
$C=\pm3$

これを,③と⑤に代入してみます。

(i) $C=3$,$D=2$ のとき

③に代入して

$2A-3B=-1$

⑤に代入して

$3A+10B=16$

式を連立すると

$\begin{aligned}6A-9B=-3\\-)6A+20B=32\\\hline-29B=-35\\B=\cfrac{35}{29}\end{aligned}$

$B$ は整数だから,不適。

(ii) $C=-3$,$D=2$ のとき

③に代入して

$2A+3B=-1$

⑤に代入して

$-3A+10B=16$

式を連立すると

$\begin{aligned}6A+9B=-3\\+)-6A+20B=32\\\hline29B=29\\B=1\end{aligned}$

③に代入して

$2A+3\cdot1=-1$
$2A=-4$
$A=-2$

したがって
$(A,B,C,D)=(-2,1,-3,2)$ (答え)