【数II不等式の証明】x^2+y^2+z^2-xy-yz-zxの因数分解の考え方(神戸大2021文系第2問)

$k,x,y,z$ を実数とする。$k$ が以下の(1),(2),(3)のそれぞれの場合に,不等式

$x^2+y^2+z^2+k(xy+yz+zx)\geqq0$

が成り立つことを示せ。また等号が成り立つのはどんな場合か。

(1) $k=2$

(2) $k=-1$

(3) $-1<k<2$

因数分解の公式

(1) $k=2$

ここは公式がありました。

公式 $(a+b+c)^2=a^2+b^2+c^2+2ab+2bc+2ca$

$x^2+y^2+z^2+2(xy+yz+zx)$
$=(x+y+z)^2\geqq0$

2 乗した値が負の数になることはないから,0 以上が成り立つ。

等号成立は $x=y=z=0$ のとき。(答え)

x^2+y^2+z^2-xy-yz-zxの因数分解

(2) $k=-1$

$x^2+y^2+z^2-xy-yz-zx$

これを因数分解します。

どうやって?

まず $(x-y)^2$ を展開すると

$(x-y)^2=x^2+y^2-2xy$ ・・・①

です。同様に

$(y-z)^2=y^2+z^2-2yz$ ・・・②
$(z-x)^2=z^2+x^2-2zx$ ・・・③

となります。①,②,③を足し合わせると

$(x-y)^2+(y-z)^2+(z-x)^2$
$=2x^2+2y^2+2z^2-2xy-2yz-2zx$

よって

$x^2+y^2+z^2-xy-yz-zx$
$=\cfrac{1}{2}\{(x-y)^2+(y-z)^2+(z-x)^2\}\geqq0$

等号成立は $x-y=0$ かつ $y-z=0$ かつ $z-x=0$ のときだから,$x-y=0$ ⇔ $x=y$ みたいに移行すると,結局 $x=y=z$ という結論になる。

等号成立は $x=y=z$ のとき。(答え)

(1)(2)の結果を利用する

(3) $-1<k<2$

何をやったらいいのか見当がつかないかもしれません。こういうときは(1)(2)の結果を利用することを考えます。

$x^2+y^2+z^2+2(xy+yz+zx)\geqq0$
$x^2+y^2+z^2-(xy+yz+zx)\geqq0$

これらと

$x^2+y^2+z^2+k(xy+yz+zx)$

を比べます。

たとえば,$2(xy+yz+zx)$ と $k(xy+yz+zx)$ の大小を比べるとすると,$xy+yz+zx$ が正の数か負の数かによって判断が分かれるでしょう。

$-1<k<2$ の範囲をもとにすると,

もし,$xy+yz+zx$ が正の数なら

$2(xy+yz+zx)>k(xy+yz+zx)$

が成り立ち,$xy+yz+zx$ が負の数なら

$2(xy+yz+zx)<k(xy+yz+zx)$

が成り立ちます。

$xy+yz+zx$ が負の数なら,正の数のときと不等号の向きが逆になるはずだよね。

今度は,$-(xy+yz+zx)$ と $k(xy+yz+zx)$ を比べます。

$xy+yz+zx$ が正の数なら

$-(xy+yz+zx)<k(xy+yz+zx)$

$xy+yz+zx$ 負の数なら

$-(xy+yz+zx)>k(xy+yz+zx)$

これらの関係を利用して証明しましょう。

(i) $xy+yz+zx=0$ のとき

$x^2+y^2+z^2\geqq0$

(ii) $xy+yz+zx<0$ のとき

$x^2+y^2+z^2+k(xy+yz+zx)>x^2+y^2+z^2+2(xy+yz+zx)\geqq0$

(iii) $xy+yz+zx>0$ のとき

$x^2+y^2+z^2+k(xy+yz+zx)>x^2+y^2+z^2-(xy+yz+zx)\geqq0$

(i),(ii),(iii)より

$x^2+y^2+z^2+k(xy+yz+zx)\geqq0$

が成り立つ。

また,等号成立は $x=y=z=0$ のとき。(証明終わり)