連立三項間漸化式って何がしたいの?を掘り下げてみる(横浜国立大2016理系第2問(文系第1問))

数列 $\{a_n\}$ は

$a_1=5,{a_1}^2+{a_2}^2+\cdots+{a_n}^2=\cfrac{2}{3}a_na_{n+1}$ $(n=1,2,3,\cdots)$

をみたすとする。次の問いに答えよ。

(1) $a_2$,$a_3$ を求めよ。

(2) $a_{n+2}$ を $a_n$,$a_{n+1}$ を用いて表せ。

(3) 一般項 $a_n$ を求めよ。

代入して値を求める

(1)から始めます。

${a_1}^2=\cfrac{2}{3}a_1a_2$ より
$25=\cfrac{2}{3}\cdot5a_2$
$a_2=\cfrac{15}{2}$ (答え)

${a_1}^2+{a_2}^2=\cfrac{2}{3}a_2a_3$
$25+\cfrac{225}{4}=\cfrac{2}{3}\cdot\cfrac{15}{2}a_3$
$a_3=\cfrac{65}{5}$ (答え)

三項間漸化式を作る

(2)に進みます。

${a_1}^2+{a_2}^2+\cdots+{a_n}^2=\cfrac{2}{3}a_na_{n+1}$ ・・・① より

$n$ を一つ増やした式を作ります。

${a_1}^2+{a_2}^2+\cdots+{a_n}^2+{a_{n+1}}^2=\cfrac{2}{3}a_{n+1}a_{n+2}$ ・・・②

②-①

${a_{n+1}}^2=\cfrac{2}{3}a_{n+1}(a_{n+2}-a_n)$
$a_{n+2}-a_n=\cfrac{3}{2}a_{n+1}$
$a_{n+2}=\cfrac{3}{2}a_{n+1}+a_n$ (答え)

三項間漸化式の解き方を掘り下げる

(3)に進みます。

ここから,三項間漸化式を解いていきます。

三項間漸化式,解き方意味が分かりません。

考え方を少し整理しておきましょう。

まず,式を移項して

$a_{n+2}-\cfrac{3}{2}a_{n+1}-a_n=0$

としておきます。

式の形から,これは等差や等比数列ではありません。ならば,あとは階差数列を考えることになります。階差数列はとなり合う項の差が,何らかの法則性を持つパターンです。そこで,となり合う項の差に $k$ をかけたものが,次のとなり合う項の差になるという想定をしてみます。

$a_{n+2}-a_{n+1}=k(a_{n+1}-a_n)$

として,$a_{n+1}-a_n=b_n$ とすれば

$b_{n+1}=kb_n$

となり,等比数列として考えることができます。

しかし上の式を展開して移項すると

$a_{n+2}-a_{n+1}=ka_{n+1}-ka_n$
$a_{n+2}-(1+k)a_{n+1}+ka_n=0$

となり,$a_{n+2}-\cfrac{3}{2}a_{n+1}-a_n=0$ と係数が合いません。

$k=-1$ ってことになるから,$1+k=0$ で $\cfrac{3}{2}$ にはならない。
じゃあ,ダメだ。
残念ながら初号機がポンコツなので,ここで改良版の2号機登場。

$a_{n+2}-\alpha a_{n+1}=\beta(a_{n+1}-\alpha a_n)$

ここから,もとの式と係数が合うように $\alpha,\beta$ の値を考えます。

式を展開して整理すると

$a_{n+2}-(\alpha+\beta)a_{n+1}+\alpha\beta a_n=0$

もとの式は $a_{n+2}-\cfrac{3}{2}a_{n+1}-a_n=0$ だから,$\alpha+\beta=\cfrac{3}{2}$,$\alpha\beta=-1$ です。

ここでクイズ。足して $\cfrac{3}{2}$,かけて $-1$ になる 2 つの数を求めろって言われたらどうする?
なんかそういうのやった覚えが。解と係数の関係?

$\alpha$,$\beta$ を求めるには,解と係数の関係を利用しましょう。

$x^2-\cfrac{3}{2}x-1=0$ を解くと
$2x^2-3x-2=0$
$x=\cfrac{3\pm\sqrt{9+16}}{4}$
$=\cfrac{3\pm5}{4}$
$=2,-\cfrac{1}{2}$

よって,$a_{n+2}-\cfrac{3}{2}a_{n+1}-a_n=0$ は
$a_{n+2}-2a_{n+1}=-\cfrac{1}{2}(a_{n+1}-2a_n)$ ・・・①

と変形できる。

こうやって,$\alpha$,$\beta$ を求めるために,二次方程式を利用する。$a_{n+2}-\cfrac{3}{2}a_{n+1}-a_n=0$ から $x^2-\cfrac{3}{2}x-1=0$ という式を作るから,2 つの式に関係があるように思う人が多いけど,両者は目的が全然別。
関係あったりとかしないんですか?
人間は「表面的に関係なさそうでも実は深いところでつながっている」みたいな話なら信じやすい。でも現実の世界では「表面的にはつながっているようでも実は無関係」って事もいくらでもある。見逃しがちだけど,それもまた同じくらい大事なこと。表面的に似てるってのに引きずられると理解が進まなくなるから,あくまで別モノって理解すると良い。

この考え方の良いところは,$\alpha$ と $\beta$ を入れ替えてもう一つ式を作ることができるところです。$\alpha$,$\beta$ を入れ替えても解と係数の関係は変わりません。

$a_{n+2}+\cfrac{1}{2}a_{n+1}=2\Big(a_{n+1}+\cfrac{1}{2}a_n\Big)$ ・・・②

何で式を 2 つ作るの?
連立組んで余計なヤツを消そうという発想。

①から片づけていきましょう。

$a_{n+2}-2a_{n+1}=-\cfrac{1}{2}(a_{n+1}-2a_n)$ ・・・①

$a_{n+1}-2a_n=b_n$ とすると

$b_{n+1}=-\cfrac{1}{2}b_n$

これは,等比数列です。

$b_1=a_2-2a_1=\cfrac{15}{2}-10=-\cfrac{5}{2}$

初項 $-\cfrac{5}{2}$,公比 $-\cfrac{1}{2}$ の等比数列だから,一般項は

$b_n=-\cfrac{5}{2}\Big(-\cfrac{1}{2}\Big)^{n-1}$

$a_{n+1}-2a_n=-\cfrac{5}{2}\Big(-\cfrac{1}{2}\Big)^{n-1}$ ・・・③

②は

$a_{n+2}+\cfrac{1}{2}a_{n+1}=2\Big(a_{n+1}+\cfrac{1}{2}a_n\Big)$

$a_{n+1}+\cfrac{1}{2}a_n=c_n$ とすると
$c_{n+1}=2c_n$

$c_1=a_2+\cfrac{1}{2}a_1=\cfrac{15}{2}+\cfrac{5}{2}$
$=10$

一般項は

$c_n=10\cdot2^{n-1}$

$a_{n+1}+\cfrac{1}{2}a_n=10\cdot2^{n-1}$ ・・・④

連立して,$a_{n+1}$ を消去します。

④-③

$\cfrac{5}{2}a_n=10\cdot2^{n-1}+\cfrac{5}{2}\Big(-\cfrac{1}{2}\Big)^{n-1}$
$a_n=4\cdot2^{n-1}+\Big(-\cfrac{1}{2}\Big)^{n-1}$
$a_n=2^{n+1}+\Big(-\cfrac{1}{2}\Big)^{n-1}$ (答え)