偽物で闇取引を混乱させる サイの密漁を防ぐための科学者のアイデア
第二次世界大戦の最中である1943年、ナチス・ドイツはイギリス経済の混乱を狙ってポンド紙幣の偽造を行いました。これはベルンハルト作戦と呼ばれています。実際に偽札を作っていたのは強制収容所に集められたユダヤ人技術者たちでした。この偽札は実際にヨーロッパ中の市場に大量に流れ込み、イギリス経済に大きなダメージを与えたと考えられています。
オックスフォード大学と中国の復旦大学の研究者はサイの角の密輸市場に対して同じような試みを提案しています。馬の毛からサイの角を作り密輸取引を混乱に陥れようというのです。
”この英国と中国の共同プロジェクトは、市場を偽物であふれさせ、密猟者や密輸業者の金銭的インセンティブを弱体化させる目的で、説得力のある現実的な人工ホーンを作る方法を見つけるための最新の試みです。”
サイの密猟
アフリカに住むサイの仲間は密猟によってその数を大きく減らしています。近年は取り締まりの強化により密猟の数は減っているものの、毎年数百頭のサイが密猟者によって殺されているとみられています。サイが密猟される理由はその角です。サイの角は中国やベトナムで漢方薬として取引され、健康増進からがん治療まで効果のある万能薬であると信じられています。また、その希少性の高さからダイヤモンドを上回る高値で取引されており、今年の四月に香港国際空港で押収された82キロのサイの角は価格にして200万ドル(約2億2千万円)に匹敵します。
効果については疑問符も
研究者たちは、馬の毛から偽のサイの角を安価に作る方法を発見しました。サイの角は牛の角と違い、毛の房を分泌物によって固めた構造になっています。そのため、馬の毛を使うことでこれとそっくりなものが作ることができる言います。この偽の角が市場に流通することになれば、サイの角の市場価格が下がり、密猟者が密猟を行う動機を失うことになると研究者は主張します。
一方でこの考えには批判もあります。環境保護団体は、市場おける供給量が増えれば需要に火が付き、密猟がさらに悪化することを懸念しています。彼らは密猟を減らす最も確実な方法は取り締まりの強化に他ならないと考えているようです。
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