正四面体の中につくる三角柱の体積と数列の極限(神戸大2017理系第3問)

1 辺の長さが $a_0$ の正四面体 $\text{OA}_0\text{B}_0\text{C}_0$ がある。図のように,辺 $\text{OA}_0$ 上の点 $\text{A}_1$,辺 $\text{OB}_0$ 上の点 $\text{B}_1$,辺 $\text{OC}_0$ 上の点 $\text{C}_1$ から平面 $\text{A}_0\text{B}_0\text{C}_0$ に降ろされた垂線をそれぞれ $\text{A}_1\text{A}’_1,\text{B}_1\text{B}’_1,\text{C}_1\text{C}’_1$ としたとき,三角柱 $\text{A}_1\text{B}_1\text{C}_1-\text{A}’_1\text{B}’_1\text{C}’_1$ は正三角柱になるとする。ただし,ここでは底面が正三角形であり,側面が正方形である三角柱を正三角柱とよぶことにする。同様に,点 $\text{A}_2,\text{B}_2,\text{C}_2,\text{A}’_2,\text{B}’_2,\text{C}’_2,\cdots\cdots$ を次にように定める。正四面体 $\text{OA}_k\text{B}_k\text{C}_k$ において,辺 $\text{OA}_k$ 上の点 $\text{A}_{k+1}$,辺 $\text{OB}_k$ 上の点 $\text{B}_{k+1}$,辺 $\text{OC}_k$ 上の点 $\text{C}_{k+1}$ から平面 $\text{A}_k\text{B}_k\text{C}_k$ に下ろした垂線をそれぞれ $\text{A}_{k+1}\text{A}’_{k+1},\text{B}_{k+1}\text{B}’_{k+1},\text{C}_{k+1}\text{C}’_{k+1}$ としたとき,三角柱 $\text{A}_{k+1}\text{B}_{k+1}\text{C}_{k+1}-\text{A}’_{k+1}\text{B}’_{k+1}\text{C}’_{k+1}$ は正三角柱になるとする。辺 $\text{A}_k\text{B}_k$ の長さを $a_k$ とし,正三角柱 $\text{A}_k\text{B}_k\text{C}_k-\text{A}’_k\text{B}’_k\text{C}’_k$ の体積を $V_k$ とするとき,以下の問に答えよ。

(1) 点 O から平面 $\text{A}_0\text{B}_0\text{C}_0$ に下ろした垂線を OH とし,$\theta=\angle\text{OA}_0\text{H}$ とするとき,$\cos\theta$ と $\sin\theta$ の値を求めよ。

(2) $a_1$ を $a_0$ を用いて表せ。

(3) $V_k$ を $a_0$ を用いて表し,$\displaystyle\sum_{k=1}^\infty V_k$ を求めよ。

四面体の扱い方

(1)から始めます。

入試問題において正四面体はよく扱われる題材です。ここでは最も基本的な方法に立ち返って考えていきます。

まず,辺 $\text{B}_0\text{C}_0$ の中点を M とします。

$\triangle\text{O}\text{B}_0\text{C}_0$ は正三角形なので,$\angle\text{O}\text{B}_0\text{M}=60\degree$ です。よって,$\triangle\text{O}\text{B}_0\text{M}$ は辺の比が $1:2:\sqrt{3}$ の直角三角形になります。$\text{O}\text{B}_0=a_0$ から,$\text{OM}=\cfrac{\sqrt{3}}{2}a_0$ となります。AM も同様に $\cfrac{\sqrt{3}}{2}a_0$ です。

次に,$\triangle\text{O}\text{A}_0\text{M}$ について考えてみましょう。上の図のように $x$ と $h$ を定めます。

三平方の定理より

${a_0}^2-x^2=h^2$
$\Big(\cfrac{\sqrt{3}}{2}a_0\Big)^2-\Big(\cfrac{\sqrt{3}}{2}a_0-x\Big)^2=h$

よって

${a_0}^2-x^2=\Big(\cfrac{\sqrt{3}}{2}a_0\Big)^2-\Big(\cfrac{\sqrt{3}}{2}a_0-x\Big)^2$
$=\cfrac{3}{4}{a_0}^2-\cfrac{3}{4}{a_0}^2+\sqrt{3}a_0x-x^2$
$=\sqrt{3}a_0x-x^2$
${a_0}^2=\sqrt{3}a_0x$
$x=\cfrac{{a_0}^2}{\sqrt{3}a_0}=\cfrac{a_0}{\sqrt{3}}$

三平方の定理より

$h^2={a_0}^2-x^2$
$={a_0}^2-\cfrac{{a_0}^2}{3}=\cfrac{2}{3}{a_0}^2$
$h=\cfrac{\sqrt{6}}{3}a_0$

したがって

$\cos\theta=\cfrac{x}{a_0}=\cfrac{\sqrt{3}}{3}$

$\sin\theta=\cfrac{h}{a_0}=\cfrac{\sqrt{6}}{3}$

(答え)

三角柱の高さを求める

(2)に進みます。

$\triangle\text{O}\text{A}_1\text{B}_1$ は正三角形なので,$\text{A}_1\text{B}_1=a_1$ です。また,正三角柱の側面は正方形なので,$\text{A}_1\text{A}’_1=a_1$ となります。

$(a_0-a_1)\sin\theta=a_1$
$(a_0-a_1)\cfrac{\sqrt{6}}{3}=a_1$
$a_0-a_1=\cfrac{3}{\sqrt{6}}a_1=\cfrac{\sqrt{6}}{2}a_1$
$\Big(1+\cfrac{\sqrt{6}}{2}\Big)a_1=a_0$
$a_1=\cfrac{a_0}{1+\cfrac{\sqrt{6}}{2}}$
$=\cfrac{2a_0}{2+\sqrt{6}}$
$=\cfrac{2a_0(2-\sqrt{6})}{(2+\sqrt{6})(2-\sqrt{6})}$
$=\cfrac{2a_0(2-\sqrt{6})}{-2}$
$=(\sqrt{6}-2)a_0$ (答え)

体積と極限

(3)に進みます。

正三角形の面積に高さをかければ正三角柱の体積が求められます。

正三角形の面積は,公式 $\cfrac{1}{2}ab\sin C$ を用いましょう。

$V_k=\cfrac{1}{2}a_k\cdot a_k\sin60\degree\cdot a_k$
$=\cfrac{1}{2}\cdot\cfrac{\sqrt{3}}{2}{a_k}^3=\cfrac{\sqrt{3}}{4}{a_k}^3$ ・・・①

(2)より

$a_1=(\sqrt{6}-2)a_0$

でした。辺の長さが $a_1$ の正四面体を作った場合,$a_2$ と $a_1$ の関係もこれと同じになるはずです。よって

$a_{k+1}=(\sqrt{6}-2)a_k$

という漸化式を作ることができます。これは,初項 $a_0$,公比 $\sqrt{6}-2$ の等比数列です。

よって,一般項を求めると

$a_k=a_0(\sqrt{6}-2)^k$

一般項って,$a_n=ar^{n-1}$ だから,$k-1$ 乗じゃないんですか?
それは初項が $a_1$ で始まる場合。今回みたいに初項が 1 じゃないときは注意が必要。

もともと(2)で,$a_1=(\sqrt{6}-2)a_0$ だったので,$a_k=a_0(\sqrt{6}-2)^{k-1}$ としてしまうと,$a_1=a_0(\sqrt{6}-2)^0$ となってつじつまが合わないことになります。式がちゃんと成り立っているか確認してミスを減らしましょう。

これを①に代入すると
$V_k=\cfrac{\sqrt{3}}{4}{a_0}^3(\sqrt{6}-2)^{3k}$ (答え)

次に極限を求めましょう。

公比を見ると

$2<\sqrt{6}<3$
$0<\sqrt{6}-2<1$

だから,$k$ をどんどん大きくしていくと $(\sqrt{6}-2)^{3k}$ は 0 に収束していきます。

最初の図を見れば,できあがる三角柱ってだんだん小さくなっていくのは想像つくと思う。

$V_k$ は初項 $\cfrac{\sqrt{3}}{4}{a_0}^3(\sqrt{6}-2)^3$,公比 $(\sqrt{6}-2)^3$ の等比数列です。

ここも,$V_1=\cfrac{\sqrt{3}}{4}{a_0}^3(\sqrt{6}-2)^{3}$ だから,初項を $\cfrac{\sqrt{3}}{4}{a_0}^3$ としないように注意。

$\displaystyle\sum_{k=1}^\infty V_k$
$=\cfrac{\cfrac{\sqrt{3}}{4}{a_0}^3(\sqrt{6}-2)^3}{1-(\sqrt{6}-2)^3}$

これ,公式でしたっけ?
公式だね。等比数列の和の公式は $\cfrac{a(1-r^n)}{1-r}$ で,$r$ が 1 より小さいとき,$n\rightarrow\infty$ とすると $r^n\rightarrow0$ に収束するから,$\cfrac{a(1-0)}{1-r}=\cfrac{a}{1-r}$ ってなる。

あとは,ひたすら計算です。

$=\cfrac{\sqrt{3}}{4}{a_0}^3\cdot\cfrac{6\sqrt{6}-36+12\sqrt{6}-8}{1-(6\sqrt{6}-36+12\sqrt{6}-8)}$
$=\cfrac{\sqrt{3}}{4}{a_0}^3\cdot\cfrac{18\sqrt{6}-44}{45-18\sqrt{6}}$
$=\cfrac{\sqrt{3}}{4}{a_0}^3\cdot\cfrac{2(9\sqrt{6}-22)}{9(5-2\sqrt{6})}$
$=\cfrac{\sqrt{3}}{18}{a_0}^3\cdot\cfrac{9\sqrt{6}-22}{5-2\sqrt{6}}$

分母を有理化ます。

$=\cfrac{\sqrt{3}}{18}{a_0}^3\cdot\cfrac{(9\sqrt{6}-22)(5+2\sqrt{6})}{(5-2\sqrt{6})(5+2\sqrt{6})}$
$=\cfrac{\sqrt{3}}{18}{a_0}^3\cdot\cfrac{45\sqrt{6}+108-110-44\sqrt{6}}{25-24}$
$=\cfrac{\sqrt{3}(\sqrt{6}-2)}{18}{a_0}^3$
$=\cfrac{3\sqrt{2}-2\sqrt{3}}{18}{a_0}^3$ (答え)