日本の歴史は移民とは無関係ではない 私たちが忘れがちな日本史

今や日本も移民の受け入れをすべきかどうかが真剣に議論される時代になりました。移民を受け入れることは簡単なことではないのですが、その前に日本人が移民として海外に渡っていった歴史を忘れるべきではありません。

”1880年以来、百万人以上の日本人が移民として日本を離れており、大部分はハワイと南北アメリカへ向かった。現在、およそ260万人の日本人の子孫が日本の外にいると推定される。その上、およそ85万人の日本の市民が、仕事や勉強、他の形態の長期の旅行のために日本の外で暮らしている。(北海道大学)”

日本人と無関係ではない移民の歴史

移民の始まりは人類がおよそ10~7万年ほど前にアフリカ大陸からその他の地域に移動し始めたときから始まります。また、アフリカから奴隷として南北アメリカ大陸に大勢の人々が移り住んでいった歴史もまた移民の歴史の一部なのです。

日本で言えば、歴史の授業で渡来人と呼ばれる人々がいたことを学んだでしょう。渡来人は主に朝鮮半島や中国から渡ってきた人々ですが、彼らは恐らく戦争難民であったと考えられています。地域によっては百済伝説と言われる、朝鮮半島の百済から戦争難民として日本に逃れてきた人々がいたことが伝えられています。

一方で、戦国時代の後半には日本人がフィリピンやタイ、カンボジアに移住し日本町と呼ばれるコミュニティを形成していたことも学んだはずです。日本はその後江戸時代に入り鎖国政策を行ったためこうした日本町は自然消滅するのですが、そこに住んでいた人々は恐らく地域の人々と同化することで日本人としてのアイデンティティを徐々に喪失していったと考えられます。

今日の日本は単一民族国家と言われ、アメリカのような民族の多様性は存在しないものとして捉えられがちですが、歴史を振り返れば日本の中にも確かに移民の歴史が存在しているのです。

複雑化する移民の概念

現代における移民の増加は、航空機や船舶による航路が発達したこととも大きく関係しています。人々はその時々で移民として海外に移り住み、また自身の国に戻ったりしています。日本でも日系ブラジル人の人々が世代を超えて再び日本に戻ってくるというケースがあります。

こうして、現代の世界では移民という形による国境を越えた人々の移動はますます活発に、そして複雑化しているのです。

文章で述べられている通り、明治維新以降の日本は多くの移民を送り出してきました。意外にも明治維新が起こって間もない時期から、日本人はハワイや南北アメリカに豊かさを求めて移住していきます。今や経済大国となった日本ですが、19世紀から20世紀前半にかけての日本人は実際はかなり貧しかったことがその理由です。彼らは地球の裏側の世界に新天地を求め、日本を旅立っていきました。かつての日本は移民を送り出す側であり、その立場は現代とはまったく反対だったのです。