スマートで持続可能なパッケージ(包装)を実現するためのチェックリスト

2019年6月28、29日に開催される大阪G20サミットでは、日本政府より海洋プラスチック投棄の問題が提案される予定である。海に投棄されたプラスチックは目に見えない小さな破片になり、海洋の生態系に大きく影響を与える上、私たちが食べる海産物にもそうしたプラスチックのかけらが混入していることが危惧されている。最近では小売店におけるビニール袋有料化の動きやバイオプラスチック導入に注目が集まっているが、根本的な解決策は無駄な包装を減らすことに他ならないだろう。ネット通販大手のアマゾンでも、無駄な包装を減らす試みは既に行われている。

バイオプラスチックにも問題はある

海洋プラごみ問題がクローズアップされる中、微生物の働きにより自然に分解するバイオプラスチックが注目されている。この分野においては日本のカネカなどが技術を持っており、日本のバイオプラスチックが世界に普及することが期待されている。

確かにバイオプラスチックは生分解されるのだから、環境中に長くとどまる既存のプラスチックよりは優れているかもしれない。

しかし、高校の化学で習ったことを思い出せば、プラスチックとは有機物であり、直鎖状に連結された炭素原子に水素原子がぶら下がる、いわゆる炭化水素の一つである。微生物がプラスチックを食料源として摂取すると代謝物として二酸化炭素を放出する。

環境における炭素循環の観点から言えば、海洋プラごみもプラスチックの状態であれば炭素は海洋に固定される(そしておそらくそのまま海底に沈んで堆積する)。しかし、微生物によって分解された場合、その炭素は二酸化炭素として大気中に移動することになる。

現状では、世界で使われているプラスチックをバイオプラスチックに置き換えた場合、どの程度の二酸化炭素が放出され、どの程度環境に影響を与えるのかは未知数である。それでも通常のプラスチックを使うよりは環境の負荷は少ないという見方もあり、今後バイオプラスチックと環境との関係については注視する必要があるだろう。

スマートで持続可能な包装を実現するためのチェックリスト

こうした中、カナダの非営利団体であるPACパッケージングコンソーシアムはホームページで「スマートで持続可能な包装を実現するためのチェックリスト」を無料で公開している。

リストは英語なので、これをチェックリストの部分を日本語にして紹介する。

スマート包装の安全性

1. スマートパッケージは人間や環境の健全性に何らかのリスクをもたらしますか。

2. スマートパッケージの基材が貴金属(銀など)を使用している場合、埋め立て地またはリサイクル施設での部品の浸出に関する懸念はありますか。

3. 食品用途に使用される場合、材料は直接的または間接的に食品に接触することを承認されていますか。

4. スマートパッケージはリチウム電池を使用していますか。それらは使用後の潜在的な熱源として安全上のリスクを示していますか。

5. 不要な追加の材料や要素はありますか。

総合的で直感的なアプローチを取り、製品の包装システム全体に対するスマートパッケージの影響を考慮して、製品の性能、安定性、および安全性を確保しましょう。

スマートパッケージが包装および印刷エレクトロニクスの規制(CONEG、RoHS、REACH、ISO / IEC)およびFDAの食品接触規制に準拠していることを確認してください。

バッテリーや電源がリサイクルの流れに与える影響を考慮してください。

それらが包装から簡単に取り外せることを確認しましょう。電池の安全な廃棄またはリサイクルに関するガイダンスを提供してください。 リチウム電池はゴミ箱に入れてはいけません。リサイクルセンターに持ち込むべきです。

再利用とリサイクル可能性

1.スマートパッケージまたは材料はリサイクル可能ですか、それともリサイクル不可能ですか。再利用可能ですか、また堆肥になりますか。

2.スマート包装は分解または製品と包装の互換性を考慮して設計されていますか。包装は不必要に複雑ではありませんか。

3.スマート包装には、材料のより良い分類を容易にするために、消費者またはMRFによって精査され、認識される機能を含めることができますか。

4.包装は使用されている材料を明確に識別していますか。該当する場合は、改訂されたプラスチック樹脂識別コードで示されていますか。

材料がリサイクルのために選別される場所である材料回収施設(MRF)を含む、パッケージの価値連鎖全体に渡る影響を検討してください。

潜在的なリサイクルの影響を理解するために業界の情報源を調べてください。例えば、プラスチックリサイクル協会(APR)、スクラップリサイクル産業協会(ISRI)、生分解性製品研究所(BPI)、intelliPACKなど。

パッケージが正常かつ安全に回収される可能性を高めるために、小売のディスプレイおよび他の販売促進用パッケージなど複数の構成要素を含むパッケージの分解を考慮して設計して下さい。
互換性のための設計 – 回収とリサイクルを可能にするために、主要な包装と同じ材料を選択することが可能かもしれません。

スマートパッケージが材料のリサイクル分類の改善を支援することを可能にする新しい技術を常に確認しましょう(例えば、電子透かし)。最新情報については、IntellipackのWebサイトを参照してください。

寿命を終えた時に各パッケージをどうするかを消費者に伝えましょう。(How2リサイクルプログラムおよび地域のWEEEプログラムを参照して下さい。)

スマートな機能性

1.スマートパッケージは、さらなる利点やより良い経験(製品の追跡、トレーサビリティ、認証、消費者/小売業者間のやりとり、回収方法とリサイクル方法)を提供しますか。

2.消費者または小売業者が製品情報にアクセスするために必要なツールは何ですか。(携帯電話、スマートウォッチ/ウェアラブル、スマート家電製品/スキャナーなど)

3.スマートパッケージは消費者に双方向性/参加方法を知らせますか。

消費者へのコミュニケーション – スマートパッケージのコミュニケーション機能を使用して、消費者が製品の品質、安全性、ブランド情報、そしてリサイクルについて十分な情報に基づいた決定を下せるようにする方法を理解しましょう。

小売業者とのコミュニケーション – コミュニケーション機能が商品の追跡、物流、トレーサビリティ、認証、製品の品質、安全性、およびリサイクルに関して小売業者に役立つことを確認します。

この機能が製品の損失を減らし、製品の有効期間を長くする方法であることを理解しましょう。

スマート製品アプリ - スマートパッケージによってスマート機器が製品やパッケージ情報へのアクセスを高めることを確実にしましょう。 マーケティングおよび購入に関する決定のほとんどがオンラインで行われる電子商取引にとって重要です。

必要な印刷または梱包の量を減らすために、オンラインまたはスマートフォンのアプリを介して追加情報を提供することを検討してください。

スマートなインク、顔料、接着剤

包装には、リサイクルされた材料の価値を損なう可能性があるスマートインク(光または感熱性)または接着剤の使用が含まれていますか。

使用されている印刷インク、接着剤、またはコーティングが問題になることはありますか。(素材/環境への浸出)

選択されたインクや顔料(ラベルや紙基材用)は、リサイクルの品質を低下させる可能性があるため、水に染み込まないようにしてください。バリアコーティングとラベル接着剤がリサイクルに適していることも確認してください(プラスチックリサイクル可能性およびブリードラベルテストについては、APR – プラスチックリサイクル協会設計ガイドを参照)。

食品包装の場合は、インクの化学物質が含まれている製品に移行しないことを確認するために試験しましょう。スマートインクは、食品の安全性を高め、食品の損失や廃棄物を減らすのに役立てるためによく使用されています。

保護フィルム、ラベル、ジャケット、ひも

1. スマート包装に使用されているラベル、ひも、またはフィルムが回収に悪影響を及ぼしたり、取り除くのは難しくありませんか。

可能であれば、梱包全体をリサイクルできるように、これらすべての品目をリサイクル可能なもの(主要な包装に共通の材料)として設計してください。

主要な包装の汚染を最小限にするためにラベル、ひも、フィルムを簡単に取り外し分解できるように包装を設計してください。

リサイクル可能な本体の外装を使用するか、ミシン目を使用して取り外しを促進するか、外装を簡単に取り外せるように簡単にはがれる接着剤を使用してください(APR Critical Guidance Test for Sleeve Labels)。

ラベルと外装を主要な包装から取り除くことができない場合は、それらが基材と接着剤に関するAPRガイドラインに準拠していることを確認して、価値の高いリサイクル可能な材料(HDPE、PET)に対する汚染を最小限に抑えましょう。

スマートセンサー、タグ、印刷された電子回路

1. スマート包装に使用されているセンサーやタグ(例:RFID、NFC)が回収に悪影響を及ぼしたり、それらを取り除くのは難しくありませんか。

2. センサーとタグは使用後にどのように回収されますか?

分解できるようにパッケージを設計します – 主要なパッケージの汚染を最小限にするためにセンサーとタグを簡単に取り外すことができるようにしましょう。部品の安全な廃棄またはリサイクルを確実にするための選択肢を理解しましょう。RANDの報告書(「参考文献」を参照)によれば、WEEE(廃電気電子製品)に従ってRFIDタグを廃棄するのが最も可能性の高い選択肢であるとのことです。

パッケージ全体をリサイクルできるように、リサイクル可能なセンサーとタグを設計しましょう。 例えば、いくつかの紙ベースのRFIDタグは、段ボールや紙と共にリサイクルできるでしょう。

可能であれば、FSC認証済みなどの認証された紙の供給源を利用してください。環境に優しい熱溶解性の接着剤を検討し、金属製アンテナに代わるものを検討してください。
Smartracなど環境にやさしいタグの最新技術開発の動向に注意しましょう。

印刷された電子機器の業界標準(IPC 米国電子回路協会、ASTM電気電子基準、IEC – 印刷された電子機器の国際基準)を参照してください。