【スマホで読む・わかりやすい】共通テスト試行H30年度数学IA【解説・正解・問題】

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第3問

くじが 100 本ずつ入った二つの箱があり,それぞれの箱に入っている当たりくじの本数は異なる。これらの箱から二人の人が順にどちらかの箱を選んで 1 本ずつくじを引く。ただし,引いたくじはもとに戻さないものとする。

また,くじを引く人は,最初にそれぞれの箱に入れる当たりくじの本数は知っているが,それらがどちらの箱に入っているかはわからないものとする。

今,1 番目の人が一方の箱からくじを 1 本引いたところ,当たりくじであったとする。2 番目の人が当たりくじを引く確率を大きくするためには,1 番目の人が引いた箱と同じ箱,異なる箱のどちらを選ぶべきかを考察しよう。

最初に当たりくじが多く入っている方の箱を A,もう一方の箱を B とし,1 番目の人がくじを引いた箱が A である事象を $A$,B である事象を $B$ とする。このとき,$P(A)=P(B)=\cfrac{1}{2}$ とする。また,1 番目の人が当たりくじを引く事象を $W$ とする。

太郎さんと花子さんは,箱 A,箱 B に入っている当たりくじの本数によって,2 番目の人が当たりくじを引く確率がどのようになるかを調べている。

(1)

箱 A には当たりくじが 10 本入っていて,箱 B には当たりくじが 5 本入っている場合を考える。

花子 : 1 番目の人が当たりくじを引いたから,その箱が箱 A である可能性が高そうだね。その場合,箱 A には当たりくじが 9 本残っているから,2 番目の人は,1 番目の人と同じ箱からくじを引いた方がよさそうだよ。

太郎 : 確率を計算してみようよ。

1 番目の人が引いた箱が箱 A で,かつ当たりくじを引く確率は,

$P(A\cap W)=P(A)\cdot P_A(W)=\cfrac{\boxed{\text{ ア }}}{\boxed{\text{イウ}}}$

である。一方で,1 番目の人が当たりくじを引く事象 $W$ は,箱 A から当たりくじを引くか箱 B から当たりくじを引くかのいずれかであるので,その確率は,

$P(W)=\cfrac{\boxed{\text{ エ }}}{\boxed{\text{オカ}}}$

である。

よって,1 番目の人が当たりくじを引いたという条件の下で,その箱が箱 A であるという条件付き確率 $P_w(A)$ は,

$P_W(A)=\cfrac{P(A\cap W)}{P(W)}=\cfrac{\boxed{\text{ キ }}}{\boxed{\text{ ク }}}$

と求められる。

また,1 番目の人が当たりくじを引いた後,同じ箱から 2 番目の人がくじを引くとき,そのくじが当たりくじである確率は,

$P_W(A)\times\cfrac{9}{99}+P_W(B)\times\cfrac{\boxed{\text{ ケ }}}{99}=\cfrac{\boxed{\text{ コ }}}{\boxed{\text{サシ}}}$

である。

それに対して,1 番目の人が当たりくじを引いた後,異なる箱から 2 番目の人がくじを引くとき,そのくじが当たりくじである確率は, $\cfrac{\boxed{\text{ ス }}}{\boxed{\text{セソ}}}$ である。


正解と解説

ア,イウ 1,20 エ,オカ 3,40

キ,ク 2,3 ケ 4 コ,サシ 2,27

ス,セソ 1,15

1 番目の人が引いた箱が箱 A である確率は $P(A)=\cfrac{1}{2}$,当たりくじを引く確率は $P_A(W)=\cfrac{10}{100}$ だから

$\cfrac{1}{2}\times\cfrac{10}{100}=\cfrac{1}{20}$

1 番目の人が引いた箱が B で,かつ当たりくじを引く確率は,上と同様に考えて

$P(B\cap W)=P(B)\cdot P_B(W)=\cfrac{1}{2}\times\cfrac{5}{100}=\cfrac{1}{40}$

したがって

$P(W)=\cfrac{1}{20}+\cfrac{1}{40}=\cfrac{3}{40}$

条件付き確率 $P_W(A)$ を求めると

$P_W(A)=\cfrac{P(A\cap W)}{P(W)}=\cfrac{\cfrac{1}{20}}{\cfrac{3}{40}}$

分母・分子ともに40倍して

$\cfrac{\cfrac{1}{20}\times 40}{\cfrac{3}{40}\times 40}=\cfrac{2}{3}$

ここで,$P_W(B)$ を求めると

$P_W(B)=\cfrac{P(B\cap W)}{P(W)}=\cfrac{\cfrac{1}{40}}{\cfrac{3}{40}}=\cfrac{1}{3}$

また,1 番目の人が A の箱から当たりくじを引いたとき,A の箱にはくじが 99 本残り,そのうち当たりくじは 9 本残っている。同様に,1 番目の人が B の箱から当たりくじを引いたとき,B の箱にはくじが 99 本残り,そのうち当たりくじは 4 本残っている。

これを式に当てはめると

$P_W(A)\times\cfrac{9}{99}+P_W(B)\times\cfrac{4}{99}$

$=\cfrac{2}{3}\times\cfrac{9}{99}+\cfrac{1}{3}\times\cfrac{4}{99}=\cfrac{2}{27}$

さらに,1 番目の人が当たりくじを引いた後,異なる箱から 2 番目の人がくじを引く場合を考えると

$=\cfrac{2}{3}\times\cfrac{5}{100}+\cfrac{1}{3}\times\cfrac{10}{100}=\cfrac{1}{15}$


花子 : やっぱり 1 番目の人が当たりくじを引いた場合は,同じ箱から引いた方が当たりくじを引く確率が大きいよ。

太郎 : そうだね。でも,思ったより確率の差はないんだね。もう少し当たりくじの本数の差が小さかったらどうなるのだろう。

花子 : 1 番目の人が引いた箱が箱 A の可能性が高いから,箱 B の当たりくじの本数が 8 本以下だったら,同じ箱のくじを引いた方がよいのではないかな。

太郎 : 確率を計算してみようよ。

(2)

今度は箱 A には当たりくじが 10 本入っていて,箱 B には当たりくじが 7 本入っている場合を考える。
1 番目の人が当たりくじを引いた後,同じ箱から 2 番目の人がくじを引くとき,そのくじが当たりくじである確率は $\cfrac{\boxed{\text{ タ }}}{\boxed{\text{チツ}}}$ である。それに対して異なる箱からくじを引くとき,そのくじが当たりくじである確率は $\cfrac{7}{85}$ である。


正解と解説

タ,チツ 4,51

(1)を参考にして同様の計算を行えばよい。
$P(W)=\cfrac{1}{2}\cdot\cfrac{10}{100}+\cfrac{1}{2}\cdot\cfrac{7}{100}=\cfrac{17}{200}$

$P_W(A)=\cfrac{\cfrac{1}{2}\cdot\cfrac{10}{100}}{\cfrac{17}{200}}=\cfrac{10}{17}$

$P_W(B)=\cfrac{\cfrac{1}{2}\cdot\cfrac{7}{100}}{\cfrac{17}{100}}=\cfrac{7}{17}$
$P_W(A)\times\cfrac{9}{99}+P_W(B)\times\cfrac{6}{99}$

$=\cfrac{10}{17}\cdot\cfrac{9}{99}+\cfrac{7}{17}\cdot\cfrac{6}{99}$

$=\cfrac{4}{51}$


太郎 : 今度は異なる箱から引く方が当たりくじを引く確率が大きくなったね。

花子 : 最初に当たりくじを引いた箱の方が箱 A である確率が大きいのに不思議だね。計算してみないと直観ではわからなかったな。

太郎 : 二つの箱に入っている当たりくじの本数の差が小さくなれば,最初に当たりくじを引いた箱が A である確率と B である確率の差も小さくなるよ。最初に当たりくじを引いた箱が B である場合は,もともと当たりくじが少ない上に前の人が 1 本引いてしまっているから当たりくじはなおさら引きにくいね。

花子 : なるほどね。箱 A に入っている当たりくじの本数は 10 本として,箱 B に入っている当たりくじが何本であれば同じ箱から引く方がよいのかを調べてみよう。

(3)

箱 A に当たりくじが 10 本入っている場合,1 番目の人が当たりくじを引いたとき,2 番目の人が当たりくじを引く確率を大きくするためには,1 番目の人が引いた箱と同じ箱,異なる箱のどちらを選ぶべきか。箱 B に入っている当たりくじの本数が 4 本,5 本,6 本,7 本のそれぞれの場合において選ぶべき箱の組み合わせとして正しいものを,次の⓪~④のうちから一つ選べ。

  箱 B に入っている当たりくじの本数
4 本 5 本 6 本 7 本
同じ箱 同じ箱 同じ箱 同じ箱
同じ箱 同じ箱 同じ箱 異なる箱
同じ箱 同じ箱 異なる箱 異なる箱
同じ箱 異なる箱 異なる箱 異なる箱
異なる箱 異なる箱 異なる箱 異なる箱

正解と解説

テ 1

(3) 7 本については(2)より,異なる箱から引くべきであることが分かっている。次に,6 本について同様の計算を行う。

2 番目の人が同じ箱から引くとき

$P(W)=\cfrac{1}{2}\cdot\cfrac{10}{100}+\cfrac{1}{2}\cdot\cfrac{6}{100}=\cfrac{2}{25}$

$P_W(A)=\cfrac{\cfrac{1}{2}\cdot\cfrac{10}{100}}{\cfrac{2}{25}}=\cfrac{5}{8}$

$P_W(B)=\cfrac{\cfrac{1}{2}\cdot\cfrac{6}{100}}{\cfrac{2}{25}}=\cfrac{3}{8}$

$P_W(A)\times\cfrac{9}{99}+P_W(B)\times\cfrac{5}{99}$

$=\cfrac{5}{8}\cdot\cfrac{9}{99}+\cfrac{3}{8}\cdot\cfrac{5}{99}$

$=\cfrac{5}{66}$

2 番目の人が異なる箱から引くとき

$P_W(A)\times\cfrac{5}{99}+P_W(B)\times\cfrac{9}{99}$

$=\cfrac{5}{8}\cdot\cfrac{5}{99}+\cfrac{3}{8}\cdot\cfrac{9}{99}$
$=\cfrac{13}{198}$
$\cfrac{13}{198}$ < $\cfrac{5}{66}$ だから,同じ箱を選ぶべきである。

問題文より,箱 B に入っている当たりくじの本数がさらに少なくなると,最初に当たりくじを引いた箱が箱 A である確率はより大きくなる。そのとき,箱 A には当たりくじが 9 本残っているので,同じ箱からひくべきである。よって,4 本,5 本のときも同じ箱を選ぶべきである。よって ①

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